BMWの「iX3」とVolvoの「EX60」が、長距離走行時の実用性を強く打ち出している。最大500マイル(約805km)級の航続距離に加え、急速充電性能も訴求しており、EVの弱点とされてきた長距離移動時の不安を和らげるモデルとして注目を集めている。
TechRadarは8月23日(現地時間)、両モデルが新世代の専用プラットフォームと高効率バッテリーを採用し、ファミリー向け電動SUV市場で存在感を高めていると報じた。
焦点となっているのは、単なるスペック競争ではない。実際の長距離走行で、充電計画の負担をどこまで減らせるかが競争力の軸になっている。
BMWの新型iX3は、新プラットフォームをベースに開発されたモデルで、一部グレードでは1回の充電で最大500マイル(約805km)の航続距離をうたう。10分の急速充電で231マイル(約372km)分の走行距離を回復できる点も特徴だ。
TechRadarが400マイル(約644km)の往復走行に使用したのは「iX3 50 xDrive」。満充電時には、次世代iDriveシステム上に航続可能距離として480マイル(約772km)が表示されたという。
空調などの使用を抑える「Max Range」モードでは、この表示が550マイル(約885km)まで伸びた。英南部の海岸地帯からコーンウォールまで移動し、現地で数日間走行した後でも、帰路に就く前の追加充電は必須ではなかったとしている。
BMWは走行性能も差別化要素に位置付ける。電動パワートレインに加え、操舵、制動、駆動力制御を統合する「Heart of Joy」を採用し、大型の電動SUVでありながら応答性と操縦性を確保したと説明した。
一方で、強い加速を求めた場面では反応の遅れを指摘する声もあった。0-62mph(約100km/h)加速は4.9秒としている。
VolvoのEX60も同様に、長距離実用性を前面に押し出す。XC60の電動版に当たるEX60は、新しいSPA3プラットフォームと改良型バッテリーを採用し、1回の充電で500マイル(約805km)超の航続距離を目指す。
試乗車のP10 AWDモデルは、95kWhバッテリーを搭載し、410マイル(約660km)の航続距離を確保した。Volvoは年内に117kWhバッテリーを積む「P12 AWD」を追加し、503マイル(約810km)の航続性能を打ち出す予定だ。
車内技術では、両車の方向性の違いも鮮明になった。BMWは、フロントガラス下端に沿って情報を表示する「Panoramic iDrive」を採用。ナビ使用時には前方ディスプレイ全体に新しい地図画面を表示し、中央のタッチスクリーンは車両設定やエンターテインメント用に使い分けられる。
走行中は「Hey BMW」による音声操作の有用性が高かった一方、物理ハプティックボタンは使いづらいとの反応もあった。
これに対しVolvoは、より抑制の効いた構成を採った。横長の大型タッチスクリーンを中心に車内機能を集約し、運転席近くに主要な設定項目を配置することで、操作性を確保したとしている。
また、GeminiベースのAIアシスタントを標準搭載する初の車両である点も特徴だ。Volvoはこの機能について、なお開発途上だとしているが、基本的な質疑応答はスムーズに動作したという。今後はGoogle DriveやGmailなど、他アプリとの連携も予告している。
安全装備の強化も進めた。EX60は、全車で電動調整式シートを標準装備する初のVolvo車で、世界初の適応型シートベルトも搭載する。
車内とシートのセンサーが乗員の体格や体重を把握し、衝突時にシートベルトの張力を自動調整する仕組みだ。Volvoは、低速衝突時の不要な負傷を減らすための設計だと説明している。
価格はVolvo EX60が約5万7000ポンド(約855万円)から7万ポンド(約1050万円)。BMW iX3の試乗車は、オプション込みで6万1000ポンド(約915万円)水準だった。
EX60はBMW iX3に加え、Mercedes-Benzの最新「GLC Electric」とも直接競合する見通しだ。
今回の比較で浮かび上がったのは、専用プラットフォーム、大容量バッテリー、電費効率の改善を組み合わせることで、電動SUVが「充電スポットを先回りして計算しながら使う乗り物」ではなくなりつつあるという点だ。長距離移動でも、充電のための停止や地方部での充電器の位置を過度に気にする必要は薄れつつある。
EVの競争軸は、バッテリー容量そのものから、実用航続距離と充電負担の軽減へ移りつつあることを示している。