GPU偏重からの脱却をにらみ、韓国政府は「開放型AIコンピューティング」基盤の整備を進める。写真=Shutterstock

韓国政府が、GPU偏重のAIインフラからの脱却に乗り出す。国産NPUの活用を軸に、CPU、GPU、NPUを組み合わせた「開放型AIコンピューティング」生態系を整備し、特定ベンダーへの依存低減と電力・コスト効率の改善を目指す。

科学技術情報通信部は8月20日、ソウル・光化門のHJビジネスセンターで、国内AI半導体業界の関係者を集め、「開放型AIコンピューティング・インフラ生態系構築に向けた懇談会」を開いた。7月に同部とAMDが締結した業務協約の後続措置として実施した。

背景にあるのは、AIコンピューティング市場の構造変化だ。生成AIサービスの拡大に伴い、市場の重心は大規模モデルの「学習」から、学習済みモデルを実サービスで動かす「推論」へと急速に移っている。AIインフラの競争力を左右する要素も、演算性能だけでなく、電力消費や運用コストの最適化へと広がっている。

AIサービスごとに求められる性能、コスト、消費電力の条件が異なるなか、単一半導体への依存にも見直しの動きが出ている。CPU、GPU、NPUといった異なる演算資源を、メモリ、ネットワーク、ソフトウェアと一体で構成し、用途に応じて最適化する「異種アーキテクチャ」が重要テーマとして浮上している。

この日、ペ・ギョンフン副首相は、開放型インフラ構築の重要性を強調した。「モデル開発を超え、異種チップセットとインフラを実際に運用できる能力の確保が核心だ」と述べたうえで、「トークン時代を見据えたAI最適化政策を強化する」と語った。

開放型AIコンピューティング・インフラは、NVIDIAのGPUが事実上主導してきたAIインフラ市場で、韓国のNPU企業にとって新たな事業機会にもなり得る。NPUはAI演算に特化した構造を持ち、推論工程で高い電力効率とコスト効率を発揮できる。一方で、市場拡大には個別チップの性能だけでは不十分で、サーバ、ネットワーク、ソフトウェアまで含めた生態系の構築が課題となる。

政府はAMDとの協力を、国産NPU生態系拡大のてこに位置付ける。特定企業のGPUを単純に代替するのではなく、CPU、GPU、NPUを併用できる環境を整え、国内企業がグローバルなAIコンピューティング生態系の一角を担えるようにする考えだ。AMDは年内に韓国内で「AI Center of Excellence」を設立し、2027年末まで常駐エンジニアを拡充して技術支援を強化する。

AMD Koreaのムン・ギョンソン常務は、科学技術情報通信部、AMD、国産NPU開発企業、統合ソフトウェア企業が連携する「ダイヤモンド」戦略を通じ、2027年末までに4大中核領域で協業を進めると説明した。

NPU業界も今回の方針を歓迎している。FuriosaAIは、開放型AIコンピューティング・インフラの定着が進むほど、韓国企業の海外展開も加速するとの見方を示した。国産NPUとAMDのCPU・GPUを組み合わせた異種AIアーキテクチャが、特定ベンダー依存を下げる有力な選択肢になり得るという判断だ。

FuriosaAIのキム・ハンジュンCTOは「ビッグテック企業は、単一ベンダー依存によるコスト上昇やサプライチェーン問題を解消するため、異種コンピューティング・アーキテクチャを積極的に導入している」と述べた。

異種アーキテクチャの対象は今後さらに広がる見通しだ。懇談会の参加企業は、AIチップの競争が単体性能の勝負から、ハードウェアとソフトウェアを統合したシステム・プラットフォーム競争へ移っているとの認識で一致した。CPUやGPUなどのアクセラレーターとメモリを高速接続するCompute Express Link(CXL)や、ネットワークやストレージなどのデータ処理を担うDPUといった次世代インフラ技術を活用し、開放型コンピューティング基盤を構築する必要性も強調された。

既存インフラの需給を巡る懸念も示された。Lablupのシン・ジョンギュ代表は「今後最大のボトルネックはGPUではなくCPUになる」と述べ、「今年下半期か来年前半には、CPUで供給混乱が起きる可能性がある」との見通しを示した。

課題としては、ハードウェアとソフトウェアをまたぐフルスタックのAIコンピューティング能力の確保も挙がった。業界関係者は、異なる装置やソフトウェアを接続できるオープンなインタフェースや国際標準、オープンソース基盤技術の拡充に加え、実環境で検証可能な国家レベルの実証インフラ整備を政府に提案した。

国産NPUが研究開発段階を超えて本格的に市場へ浸透するには、データセンターやAIサービスでの活用実績の確保がカギになる。半導体そのものの演算性能だけでなく、既存のCPU・GPUとの連携、サーバ構成、ソフトウェア互換性まで検証して初めて、グローバル市場での競争力を持てるためだ。

ペ・ギョンフン副首相は「グローバルAI市場は学習中心から推論中心へと移行しており、競争の舞台も個別チップの性能を超え、電力・コスト効率を備えた開放型AIコンピューティング生態系へと広がっている」と指摘した。そのうえで、「国産NPUが実際のデータセンターやAIサービスの現場で活用される成功事例を確保できるよう、フルスタック実証支援を強化し、関連生態系の構築を加速する」と述べた。

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