廃棄予定のスマートフォンを計算資源として再利用する実験を進める(写真=Shutterstock)

Googleが、役目を終えたPixelスマートフォンをデータセンター向けの計算資源として再利用する実験に着手した。廃棄予定の端末をサーバー資源に転用し、インフラコストの圧縮と電子廃棄物の削減を両立させる狙いだ。

米ITメディアのTechRadarが6月20日(現地時間)に報じたところによると、Googleとカリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)の研究チームは、退役したPixelを汎用的な計算基盤として活用するプロジェクトを進めている。

実験の中核は、スマートフォンに残る演算性能をデータセンター環境で引き出す点にある。研究チームはディスプレイやバッテリー、カメラ、スピーカー、外装ケースなどサーバー運用に不要な部品を取り外し、SoCを搭載したメインボードを中心に構成を絞り込んだ。

ソフトウェア面では、Androidをデータセンターで一般的なLinuxベース環境に載せ替え、Kubernetesなどのオーケストレーション基盤でも運用できるよう設計したという。

この取り組みの出発点は環境負荷の軽減だ。Google Researchは、使われなくなったモバイル機器が、製造時に発生する炭素排出や電子廃棄物の問題を拡大させていると指摘。放置・廃棄されるスマートフォンを新たな計算資源として活用する方が、より効率的だと判断したとしている。

性能面では、最新のデータセンターサーバーを置き換える水準には達していないものの、教育機関や小規模サービスの運用には十分な可能性があるという。研究チームによると、発売から3年が経過したスマートフォンでも、単一コア性能では一部のサーバー構成を上回る結果が出た。

また、退役スマートフォンを25~50台束ねれば、デュアルソケット構成のサーバーCPUに近い計算性能を提供できる可能性があるとしている。

焦点の1つがコストだ。研究チームは、古いスマートフォンが最新サーバーより高速かどうかではなく、より低いコストで実用的な計算性能を提供できるかが重要だと説明した。

実証試験では、スマートフォン20台で構成したクラスタが、75人超の学生が利用するアプリケーションを安定的に支えた。学校や教育機関がクラウドサービスに依存せず、保管していたスマートフォンや再利用機器を使って独自にサービスを運用できる可能性を示した格好だ。

研究チームは現在、約2000台規模のスマートフォン・データセンターの構築も進めている。施設は約100の授業を同時に支援できる規模を想定しており、従来型のサーバーインフラを新設するより大幅なコスト削減が見込まれるという。

メモリやストレージの価格上昇で、新規サーバーの構築コストが膨らんでいることも、プロジェクトを後押しした要因だ。今回の実験は、電子廃棄物の再利用にとどまらず、スマートフォンを実運用のインフラとして活用する試みといえる。

旧型スマートフォンを監視システムや演算処理に再利用する研究自体は過去にもあったが、今回はデータセンター運用を前提に、ソフトウェアスタックや管理の仕組みまで含めて設計した点が特徴だ。NASAが、2014年に初採用されたQualcomm 801プロセッサを火星ヘリコプター「Ingenuity」と「Perseverance」ミッションの航法機能に再利用した例もある。

もっとも、実用化の広がりは、民生向けハードウェアがデータセンター環境での常時稼働にどこまで耐えられるかに左右される。研究チームは年内にプラットフォーム全体を公開する計画で、連続運用下での耐久性と運用効率を検証する方針だ。

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