NaverとKakaoで、グループ運営と組織再編を背景に、労使交渉の枠組みを見直す動きが表面化している。Naverでは16法人を一括対象とする統合交渉、Kakaoでは主要系列会社を束ねた共同交渉が労組側から求められており、本社やグループが労使関係にどこまで責任を負うのかが新たな争点になっている。
業界によると、Naverは20日、労組から16法人を対象とする統合交渉を正式に求められた。Kakaoも26日、主要系列会社を対象にした共同交渉の要求を受ける見通しだ。
Kakaoは21日、会社を「KakaoAI」と「KakaoX」に分割する人的分割案を発表した。事業運営と資本配分の効率化を掲げる中、労組側は系列会社をまたぐ新たな交渉枠組みを求めており、法人ごとの独立性とグループとしての責任をどう切り分けるかが論点として浮上している。
◆Naver、16系列会社を巡る個別交渉の限界が表面化
Naverは本社を中心に、多様なサービスや事業を複数の系列会社に分けて運営している。Naver労組には、本社と系列・関連会社28法人に所属する約6200人の組合員が参加しており、このうち16法人で個別交渉が行われている。
焦点は、法人としては独立していても、人事、予算、投資、組織改編などの主要な意思決定ではNaver本社の影響力が大きいとの指摘がある点だ。
Naver労組支会は20日、京畿道城南市のNaver本社ビル「1784」で「2026年 統合交渉キックオフ」を開き、本社に対して16法人を対象とする統合交渉を正式に要求した。経営プロセスの改善、勤務環境、安全衛生、福利厚生、統合的な労使関係といった共通課題を、本社と一括して協議するよう求める内容だ。
労組によると、直近1年間で16法人の交渉回数は約150回、投じた時間は約1000時間に達した。個別法人ごとに交渉しても、最終的な合意には本社判断が影響し、同様のやり取りが繰り返されているという。
オ・セユンNaver支会長は「交渉は別々でも、Naverが決めなければ前に進まなかった」とした上で、「実際の意思決定構造と交渉構造を一致させたい」と述べた。
この構図が表面化した事例として、最近ではNaver Zの賃金交渉がある。Naver Zの労使は2月26日に賃金交渉に入ったが、会社側が経営悪化を理由に賃上げ率0%を維持し、交渉は決裂した。Naver Zは2020年の設立以来黒字化しておらず、2025年末時点で6年連続の資本欠損状態にあるという。
その後、労働委員会による調整も2回とも打ち切りとなり、労組は争議行為の賛否投票で投票率88.6%、賛成率98%を記録し、争議権を確保した。8月末までに会社側から責任ある回答がなければ、9月9日を「Z行動の日」として争議行為に踏み切る方針だ。
労組は、NaverがKREAMの有償増資に1300億ウォン(約143億円)を投じながら、Naver Zの賃金問題では個別法人の経営状況を理由にしている点を問題視している。
一方で、系列会社ごとに事業構造や業績が異なる以上、本社が全社一律で労働条件を決めるのは難しいとの見方もある。統合交渉が受け入れられた場合、本社が系列会社の労使関係にどこまで関与するのかも今後の論点となる。
◆人的分割を打ち出したKakao、グループ横断交渉が争点に
Kakaoが抱える課題は、Naverとはやや異なる。
Kakaoは21日、現行会社を「KakaoAI」と「KakaoX」に人的分割する支配構造再編案を公表した。会社側は、企業価値の向上と意思決定、資本配分の効率化を主な目的としている。
会社構造の再編が進む中で、雇用、組織改編、系列会社間の人材移動といった問題を、どの単位で協議するのかも新たな争点になっている。
Kakao労組支会は、人的分割発表に先立つ19日、8月末に主要系列会社が参加する共同交渉を推進すると明らかにしていた。26日には板橋駅広場で、Kakao Bankの5日連続ストライキ決議大会に合わせ、Kakaoグループの共同交渉宣言式を開く予定だ。
Kakaoの共同交渉は、Naverの統合交渉とは構造が異なる。法人ごとの交渉は維持したまま、複数社に共通して影響する課題だけを別枠の共同交渉で扱う方式だ。法人経営の独立性を保ちつつ、グループレベルで決まる事項については別途協議の場を設ける考え方といえる。
Kakao労組支会は、責任経営と雇用安定、公正な成果配分に加え、組織改編、売却、分社に関する事前協議、グループ内の配置転換、グループレベルの雇用・福利厚生のセーフティーネットなどを共同交渉の議題として提示した。
とりわけ今回の人的分割後に、リストラや売却、合併、分社、事業移管などが発生した場合、雇用と労働条件をどう守るのかを会社と協議すべきだという立場だ。Kakao労組支会は、12月の臨時株主総会までに、人的分割がKakaoと主要系列会社の雇用・労働条件に及ぼす影響を開示し、協議に着手するよう求めている。
◆法人の独立性とグループ責任、どこで線を引くか
NaverとKakaoで事情は異なるものの、経営面で突き付けられている問いは共通している。
両社は成長の過程で、事業ごとの専門性を高めるため複数の法人や系列会社を運営してきた。各法人は独自の取締役会、経営陣、財務構造を持つ独立企業であり、業績や人員構成も異なる。このため、賃金や人事を含むすべての労働条件をグループ一律で適用するのは難しい。
その一方で、系列会社間の人材移動、共通の福利厚生や勤務制度、大規模投資や事業再編など、本社またはグループの判断が複数法人に同時に影響を及ぼす領域もある。
結局のところ、NaverとKakaoが整理を迫られているのは、法人別運営を維持しながら、本社またはグループが労使関係にどこまで責任を負うのかという点だ。
Naver労組は、既存の法人別団体交渉そのものを一本化する統合交渉を求めている。これに対しKakao労組は、法人別交渉を維持しつつ、共通議題を扱う共同交渉を追加する考えだ。いずれの方式も、本社と系列会社の権限と責任の分担に新たな基準を求めるものといえる。
一部のゲーム会社では、NCやSmilegateなどが系列会社合同の交渉を実施しており、Nexonも親会社の団体協約の結果が系列会社に連動する構造を運用している。
3月に施行された労働組合法2条・3条改正で、労働条件を実質的かつ具体的に支配または決定する主体を使用者とみなす範囲が広がったことも、企業側が考慮すべき制度面の要因となっている。
もっとも、系列会社ごとに事業や財務状況が異なるため、すべての労使課題を本社レベルで扱うことには現実的な限界がある。共通の福利厚生や勤務制度、組織改編のようにグループの影響が大きい課題と、賃金や人事のように個別法人の経営状況が重い意味を持つ課題を、どう切り分けるかが核心となる。
NaverとKakaoが、統合交渉や共同交渉の要求にどう対応するのかによって、本社と系列会社の間で労使関係の責任範囲を定める新たな基準が形作られるのかが注目される。
業界関係者は「系列会社ごとに経営状況や事業特性が異なるため、すべての労使問題を本社が一括して扱うのは難しい」とした上で、「本社が実質的に影響を及ぼす事項がどこまでか、それに見合う交渉責任をどのレベルで負うのかという基準を、より明確にする必要がある」と話した。