写真=ファン・ミョンジュン教授

ソウル市立大機械情報工学科のファン・ミョンジュン教授は、ロボティクスAIを含むフィジカルAIについて、実用化の鍵は信頼性の高いハードウェアにあるとの見方を示した。認識と操作の性能がロボットの実力を左右するとしたうえで、製造現場を中心に導入が広がる可能性があると述べた。

ファン教授は最近の取材で、「ロボティクスAIでは、信頼して使えるハードウェアが重要だ。問題なく動作することが前提になる。信頼できるロボットを作るのは簡単ではなく、現時点では実証が活発に進んでいる段階だ」と語った。

同教授によると、ロボティクスAIの性能を左右する中核は「認識」と「操作」だ。物体を見分け、どれだけ速く正確に動かせるかによってロボットの性能は大きく変わるとして、この領域に研究を集中しているという。

ファン教授の研究チームは、国際ロボット競技会「RoboCup 2026」の「ARMチャレンジ(Autonomous Robot Manipulation Challenge)」部門で優勝した。2022年、2023年に続く通算3度目の優勝となる。

ARMチャレンジは、自律ロボットによるマニピュレーションを競う部門だ。今年はリサイクル分別ロボットがテーマで、各チームは制限時間内に物体をどれだけ正確かつ迅速に把持できるかを争った。

競技では、缶や箱、瓶など数十個の物体をカメラとロボットを使って30分以内に分別することが求められた。ファン教授のチームは、1つを除いてすべて正確に分類したという。

今回の大会に向けて、同チームは認識と操作の2領域を分けて設計した。認識ではオープンソースモデルをチューニングし、独自実装を進めた。特に、物体を認識したうえで「どうつかむか」という把持候補を生成する部分に力を入れた。

一方、操作・制御にはMathWorksのMATLABを活用した。ファン教授は、MATLABについて外部モデルとの連携性が高く、フィジカルAI分野でも活用事例が多いと説明。AI機能に加え、ハードウェア統合の面でも扱いやすく、データフォーマットが標準化されているため、自社開発モデルでも形式を合わせれば連携時の遅延を抑えやすいとした。

安全性と信頼性の確保でも、MATLABのようなツールは重要になり得るという。ファン教授は、安全性を高めるには最終的に十分なテスト回数が必要で、その過程ではシミュレーションを多用すると説明した。シミュレーション結果を実機のロボットへ適用するにはノウハウが求められ、この課題の解決にもツールが有効だとした。

フィジカルAIではデータも重要な要素になる。ファン教授は、「どういう状況でどう動くか」といったデータが、ロボットの動作精度やシステム性能に大きく影響すると指摘した。

同教授によると、チームはテスト用データを収集して学習を行い、学習済みモデルをGPU搭載ノートPCに載せて認識機能を実装した。学習にはクラウドなどの高性能コンピューティング資源が必要だが、推論はローカル環境で処理できるという。

今回の成果について、ファン教授は実運用を視野に入れられる水準に達したとの認識を示した。物が整然と置かれていない非定型環境でも正確に認識・分類できたほか、競技会場の照明条件も一般的な工場のように厳しかったと振り返った。

製造現場への適用可能性についても前向きだ。今回の競技環境よりも対象物が少ない現場もあるため、その場合は把持候補の数を減らし、処理速度をさらに高められるとしている。

同研究室では、ビジョン認識やロボットマニピュレーターを中心に、ヒューマノイドの形状そのものにこだわるのではなく、認識と制御に必要な要素技術を開発しているという。

商用化の観点では、特に製造現場に注目している。需要は製造業から広がるとの見立てで、ファン教授は韓国では製造分野でフィジカルAIの活用が進んでおり、有意味なデータも多いと強調した。

今後は、ロボットAIそのものの性能向上に加え、現場適用の事例を増やすことにも力を入れる。とりわけヒューマノイドロボットの現場実証に注力しているという。

また、車輪移動式で2本の腕を備えたヒューマノイドロボットが、韓国の製造現場では有力な選択肢になるとみている。

ファン教授は、韓国の製造現場は比較的整然としており、片腕より両腕のほうが利点を発揮しやすい一方、二足歩行は負荷が大きいと指摘した。歩行は難易度が高く、エネルギー消費も大きいうえ転倒リスクもあるため、歩行型よりも車輪型のヒューマノイドのほうが現実的だとしている。

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