SK Telecomは8月24日、自社AIモデルからインフラ、一般向けサービスまでを一貫して手掛ける「みんなのAI」事業を本格化すると明らかにした。実サービスで蓄積したデータや運用経験をモデル改善に戻す「知能の改善ループ」を構築し、AI競争力の源泉に位置付ける。
同日、同社AI CIC長のユ・ギョンサン氏がニュースルームへ寄稿し、今後の戦略の方向性を示した。AI競争の焦点は、より大規模なモデルや単純な推論性能の優劣から、実サービスでの実装力と改善スピードへ移りつつあるとの認識を示した。
同社はこのほど、6880億パラメーター規模の独自AI基盤モデル「A.X K2」を公開した。従来モデルに比べ、数学・科学分野の推論、韓国語の知識、長文理解、エージェント機能を強化したとしている。
A.X K2を中核に据える同社チームは、政府主導の独自AI基盤モデル開発事業で第2段階の評価を通過し、Upstage、LG AI Researchとともに第3段階へ進んだ。
ユ氏は、今後のAI競争力はモデル単体の性能だけでは測れなくなるとの見方を示した。モデルの知能、推論コスト、サービスの完成度、実データに基づく再学習と改善の速度、さらに信頼性までを含め、全体が一体で機能する必要があると説明した。
とりわけ、数百万人規模が同時に利用する環境では、あらゆるリクエストを最高性能モデルだけで処理するやり方では、採算性を確保しにくいと指摘した。
このため同社は、リクエストごとに一部パラメーターだけを選択的に有効化するMixture of Experts(MoE)構造に加え、質問の難易度に応じて推論レベルを調整する技術や、モデルの軽量化・高速化を活用する。単純な問い合わせは軽量モデルで処理し、複雑な作業は大規模モデルに振り分けることで、運用効率を高める考えだ。
あわせて、メモリー管理や演算資源の配置など、システムや半導体レベルでの最適化も進める。AIインフラを自ら設計・運用してきた知見を生かし、モデルからサービスまでの全工程で推論コストの引き下げを図る。
ユ氏は、AI競争における重要な指標として「改善速度」を挙げた。実サービスの中でモデルがつまずくポイントを見つけ、評価と学習に反映し、改善したモデルを再びユーザーに提供する。この一連のサイクルをどれだけ速く回せるかが競争力を左右するとした。
同社は、モデル・サービス・インフラをまたぐフルスタックのAI開発力と、大規模サービスの運用経験を通じてこれを実現する方針だ。月間アクティブユーザー数(MAU)が1000万人を超えるAIサービス「A.」の運用で得た知見を活用し、サービスから得られるフィードバックをモデルとシステムの改善につなげる。
「みんなのAI」事業では、ユーザーの質問に答えるだけのAIにとどまらず、依頼を実際の行動や成果につなげる「実行するAI」の実現に重点を置く。
ユ氏は、AIエージェントの時代には、モデル単体の正答率だけでなく、計画立案、検索、ツール呼び出し、実行といった複数段階を通じて、ユーザーの意図を結果に結び付ける「エンドツーエンドの成功率」が重要になるとの見通しを示した。
同社は、金融、モビリティ、メディア、教育、医療、公共、税務、ケアなどの分野で企業とコンソーシアムを組成した。SK Telecomを含め、約20の企業・機関・団体が参加している。
これとは別に、Hana Bank、NH Nonghyup Bank、Tmoney Mobility、Bucketplaceなど11社と業務提携(MOU)を締結し、協業先の拡大も進める。
コンソーシアムでは、ユーザーの要請を分析し、適切なAIモデルや技術、専門サービスを組み合わせる「オーケストレーター」の役割を担う。「みんなのAI」サービスは、金融、モビリティ、メディア、教育、健康といった日常領域から始め、今後は若年層や小規模事業者、シニア向けの税務、行政、ケアなど専門領域へ広げる計画だ。
同社は、AIの活用領域が金融や医療など生活に密着した分野やサービス実行へ広がるほど、信頼性と安全性が重要になるとみて、関連技術の強化も進める。
モデル最適化とサービング高速化によって応答速度を高める一方、AIモデル品質の客観評価、常時のレッドチーミング、リアルタイムの安全監視、ガードレールの適用を進める。個人情報や機微情報を保護するためのセキュリティ体制も整備する。
ユ氏は、国内でAIモデル開発、サービス普及、実利用の経験、次世代モデルの学習へとつながる好循環を築く必要があると強調した。SK Telecomは、A.X K2、AIインフラ、「A.」の大規模運用で培った知見、さらに分野別の専門企業の能力を組み合わせ、日常的に使えるAIサービスとして「みんなのAI」を育成する方針だ。
ユ氏は「これからのAI競争は、最良のモデルを一度作って終わる競争ではない。最も速い『知能の改善ループ』を構築する競争になる」と述べた。