ドナルド・トランプ米大統領(写真=ホワイトハウス)

ドナルド・トランプ米大統領は、2030年までに米国内のロケット打ち上げ・再突入の認可件数を年1000件超に引き上げる方針を盛り込んだ国家安全保障メモに署名した。発射施設の審査や環境レビューを迅速化し、商業宇宙分野の打ち上げ能力を大幅に高める狙いがある。

ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanが8月21日(現地時間)に報じた。ホワイトハウスはこのメモを、既存の国家宇宙輸送政策に代わる「米国第一」の新たな枠組みと位置付けている。

メモでは、連邦機関に対し、発射施設の審査や環境レビューの迅速化を指示した。目標は、連邦・民間部門を含む米国内の打ち上げ・再突入認可を2030年までに年1000件規模へ拡大すること。単純計算では、1日当たり約3件の打ち上げ・再突入を認可する水준となる。

米国の2025年の軌道打ち上げ実績は178件で、年1000件の目標は現状の5倍超に当たる。

関係省庁の役割分担も示した。商務省と米連邦通信委員会(FCC)は、打ち上げ、再突入、軌道上作業に必要な無線周波数帯の確保を担う。運輸省には、優先空域ルートの指定に加え、打ち上げ関連の交通を航空交通管制の近代化システムに組み込むよう求めた。新たな財政支出を伴う施策ではなく、審査・事務手続きの迅速化が柱となる。

恩恵を受ける企業としてまず挙がるのがSpaceXだ。イーロン・マスク氏率いる同社は、米国の宇宙打ち上げ能力で最大の比重を占める。Starshipプログラムだけでも150億ドル(約2兆2500億円)超を投じており、打ち上げ回数が急増すれば、既存インフラと打ち上げ能力を持つ事業者が有利になりやすい。

環境保護や生息地保全に関する審査負担の軽減も、SpaceXには追い風となりそうだ。これまで活動家団体の反発や訴訟リスクは、打ち上げ事業のコスト増要因となってきた。ただ、今回のメモが環境団体の法的対抗手段まで奪うものではなく、個別の承認案件を巡っては引き続き司法の場で争うことができる。

今回のメモは、2025年8月に出された商業宇宙産業の競争に関する大統領令の延長線上にある。米国が民間打ち上げ市場で圧倒的な優位を保つ一方、各国も能力増強を急いでいる。カナダは、自国から軌道投入できない主要7カ国の1つとされる中、「Launch the North」プログラムの下で3億500万カナダドルを投じ、Canadian Rocket Company、NordSpace、Reaction Dynamicsなどのスタートアップを支援している。

中国とインドの動きも活発だ。中国は今週、Zhuque-3の打ち上げ成功後にロケット第1段の陸上回収に初めて成功した。7月10日の海上ネット回収に続く前進とされる。インドでは7月、Skyrootが350キログラムのペイロードを搭載した低軌道ロケットの試験打ち上げを終え、世界の衛星打ち上げ市場への参入姿勢を示した。

米国の今回の措置は、規制緩和と行政手続きの迅速化を通じて、打ち上げ供給能力の底上げを図るものだ。ただ、新たな予算配分は盛り込まれておらず、関係機関は官民連携や既存予算の再配分を通じて目標達成を目指す必要がある。年1000件体制の実現には、許認可のスピードだけでなく、空域運用や周波数確保、個別承認を巡る法的リスクへの対応が焦点となる。

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