中国のロボットスタートアップACE Roboticsは、Embodied AIが2027年末にも商用化の転換点を迎えるとの見方を示した。AIモデルの高度化に加え、実環境で蓄積される大規模データがそろえば、ヒューマノイドロボットはデモ段階を超え、実際の業務現場への投入が可能になるという。
ブロックチェーン系メディアDecryptが23日(現地時間)に報じたところによると、ACE Roboticsのワン・シャオガン会長は、Embodied AIが来年末までに、いわゆる「ChatGPTモーメント」に到達する可能性があると述べた。
同氏が鍵として挙げたのが、世界モデルと実環境データだ。言語モデルがテキストを基に学習するのに対し、ロボットは物理空間を理解し、その中で動作しなければならない。このため、現実の環境で蓄積された膨大なデータが不可欠だと説明した。
現在のヒューマノイド業界における最大の課題も、実環境データの不足にある。歩行やダンス、ボクシングのような動作は実演できても、予測の難しい現実空間で多様な作業を安定してこなすには、なお限界があるという。
ワン会長は、業界全体で過去数年に蓄積された実環境データは約10万時間にとどまると指摘した。Embodied AI向けの基盤モデルを訓練するには、なお大幅に不足しているとの認識を示した。
この不足を埋めるため、ACE Roboticsは今後2年以内に数千万時間規模の実環境データを確保する計画を掲げている。具体策として、今後1年間で自社技術を1000店舗に導入する方針だ。
実店舗にロボットを投入し、周辺環境の認識から状況判断、実際の動作までを繰り返し学習させる。実験室ではなく、変数の多い現実空間でデータを蓄積する狙いがある。
Embodied AIは、ロボットがセンサーとアクチュエーターを通じて周辺環境を認識し、状況を推論して行動に移す技術を指す。これに世界モデルが組み合わされることで、行動前に周囲で起こり得る変化を予測する能力も高まるとしている。
ワン会長が実環境データの確保を最重要課題に位置付けるのもこのためだ。現実世界で起こる多様な状況を十分に学習して初めて、予測が難しい環境でも安定した作業が可能になるという考えだ。
ACE Roboticsは事業拡大のペースも速い。2025年7月設立の同社は、ヒューマノイド向けAIモデルを開発しており、Ant GroupとSenseTimeの支援を受けている。
2026年上期には1億ドル超(約150億円)を調達した。あわせて、できるだけ早い時期に新規株式公開(IPO)を進める方針も示した。
競合各社も、Embodied AIと実環境データの確保を急いでいる。Boston Dynamicsは1月、ヒューマノイドロボット「Atlas」の量産型バージョンを公開し、AI技術の進展によって商用配備に一歩近づいたと明らかにした。
Alibabaも6月、ロボットの移動や物理作業の実行、実環境シミュレーションを支援する「Qwen-Robot Suite」を公開した。
研究分野でも、ヒューマノイド訓練向けの実環境データを確保する取り組みが続く。10月には、人間の動きを記録し、ヒューマノイドの訓練に活用できる装着型外骨格「HumanoidExo」が公開された。
ヒューマノイド産業の競争軸は、ハードウェア性能だけでなく、AIモデルと実環境データの確保へと広がっている。ACE Roboticsは、大規模な店舗導入とデータ収集を武器に、Embodied AIの商用化時期を前倒しする戦略を打ち出した格好だ。
数千万時間規模の実環境データを確保し、学習に活用できるかどうかが、Embodied AIがデモを超えて日常の業務現場に進出できるかを左右する重要な変数になりそうだ。