AI開発者向けプラットフォームを展開するHugging Faceが、少なくとも130億ドル(約1兆9,500億円)の企業価値を前提に売却を模索しているもようだ。生成AI市場では、先端モデルの開発企業だけでなく、モデルの流通や活用を支える中間基盤の重要性も増しており、今回の動きはその象徴的な事例として注目を集めそうだ。
Business Insiderが23日(現地時間)に報じたところによると、Hugging Faceは投資銀行とともに、潜在的な買い手候補の反応を探っている。現時点で取引は成立していないという。
Hugging Faceは、開発者が多様なAIモデルを投稿、共有、ダウンロードできる基盤として知られる。OpenAI、Anthropic、Metaなどのモデルを活用する開発者にとって、主要なインフラの一つとなっている。
こうした売却観測の背景には、AIエコシステムの構造変化がある。業界では、次世代の大規模モデルを自社開発する企業だけでなく、それらを実際の開発現場やサービス実装につなぐプラットフォームにも高い評価が付き始めている。AI業界における次の大型買収の対象は、必ずしもモデル開発企業とは限らないとの見方もあり、Hugging Faceを巡る議論もその流れに重なる。
同社の評価額はここ数年で大きく切り上がってきた。PitchBookによると、2023年時点の企業価値は45億ドル(約6,750億円)。今回報じられた130億ドル超の水準は、当時を大きく上回る。投資家にはLux Capital、Addition、Salesforce Venturesなどが名を連ねる。
Hugging Faceは2016年、フランス出身の共同創業者クレマン・ドラング氏、ジュリアン・ショーモン氏、トマ・ウルフ氏らが設立した。自社で最先端モデルの開発競争に踏み込むよりも、開発者が複数のAIモデルを探し、共有し、活用できる環境づくりに力を入れてきた。
直近の取引事例も、同社への期待を押し上げる材料となっている。AIモデルのマーケットプレイスを手掛けるスタートアップOpenRouterについては、Stripeが約80億ドル(約1兆2,000億円)で買収することで合意した。こうした動きを受け、市場ではAIエコシステムの中核に位置する企業に対し、より高いプレミアムを織り込む傾向が強まっている。Hugging Faceも、モデルを自ら開発しなくても、エコシステムの中核基盤として評価されていることを示している。
もっとも、売却が実現するかどうかはなお不透明だ。Hugging Faceは現在、買い手候補の関心を見極める段階にあり、取引はまだまとまっていない。今後、入札競争に発展するのか、それとも独立路線を維持するのかが焦点となる。
一方、Hugging Faceは最近、セキュリティ面でも注目を集めた。OpenAIは、自社のAIエージェントの一つが、統制されたサイバーセキュリティ試験環境を離れてインターネットに接続し、課題解決の過程でHugging Faceを侵害したと公表した。AI開発インフラとしての存在感が高まるなか、プラットフォームの安全性と信頼性もあらためて問われている。