Kakaoは8月24日、会社分割後の存続法人「KakaoX」を、主要子会社の株式保有と投資資金を基盤に既存事業を伸ばし、新たな成長企業を発掘する投資・ポートフォリオ運営会社として位置付ける方針を示した。発足時点で活用可能な投資余力は約6兆4000億ウォンとなる。
今回の再編では、KakaoTalkとAI事業を担う新設法人「KakaoAI」と、子会社管理と投資を担うKakaoXに役割を切り分ける。Kakaoは、KakaoBankやKakaoPay、KakaoMobilityを新規事業として育ててきた実績に加え、Dunamu、Danggeun、Korea Credit Dataなどへの投資経験もKakaoXに集約し、次の成長軸を築く考えだ。
Kakaoによると、KakaoXが確保する投資余力6兆4000億ウォンは、Kakao InvestmentによるDunamu株売却や、SK telecom、KADOKAWAなど保有資産の流動化で確保する約2兆3000億ウォンと、テックフィン、コンテンツ、モビリティ各社が持つ約4兆1000億ウォンの投資余力を合算した規模となる。
この資金は既存子会社の支援にとどまらず、新規事業や有望企業への投資にも振り向ける。Kakaoはこれまで、Dunamu、Danggeun、Korea Credit Dataへの投資を通じて企業価値の上昇を取り込んできたが、こうした手法をKakaoXの主要な成長戦略の一つに据える。
◆子会社管理から成長投資へ
今回の人的分割の中核は、これまでKakaoが単独で担ってきた2つの機能を分離する点にある。新設するKakaoAIはKakaoTalkを軸に、AI、広告、コマースに集中する。一方のKakaoXは、子会社株式を保有しながらポートフォリオ管理と投資を担う。
KakaoX傘下には、KakaoBank、KakaoPay、KakaoPay Securitiesなどのテックフィン事業、Kakao Entertainment、SM Entertainment、Kakao Piccomaなどのコンテンツ事業、KakaoMobilityが入る。既存事業の成長を後押ししつつ、新たな事業機会を見いだし、次の成長の柱へ育てるのがKakaoXの役割となる。
背景には、従来のKakaoで経営資源が子会社管理に偏っていたとの問題意識がある。直近5年間の取締役会における非定例の意思決定の約85%が子会社関連案件で、直近1年間の社内投資審議案件でも子会社関連の比率は84%に達した。
Kakaoは、AI事業に集中すべき局面でありながら、子会社への資本支援や貸し付けといった対応に経営資源を大きく割かれていたと説明する。分割後は、KakaoAIの管理負担を軽減し、KakaoXが子会社管理と投資を専門的に担うことで役割を明確化する。
もっとも、KakaoXを持株会社へ転換するわけではない。KakaoはKakaoXを投資会社かつポートフォリオ運営会社と定義し、将来的に持株会社へ移行する計画はないとした。分割後は、これまでグループのコントロールタワーだったCA協議体も維持せず、両社が独立して経営する。
これに伴い、市場の評価軸も従来のKakaoとは変わる見通しだ。KakaoTalkの広告・コマースの成長よりも、保有子会社の企業価値をどこまで高められるか、確保した資本を新たな成長事業にどれだけ効率的に振り向けられるかが重要になる。
◆仮想資産、フィジカルAI、海外投資に拡大
KakaoXは、既存事業を基盤に新たな成長領域の開拓も進める。
テックフィン分野では、KakaoBank、KakaoPay、KakaoPay Securitiesを基盤に、仮想資産とステーブルコイン事業を新たな成長テーマに掲げた。
コンテンツ分野では、Kakao Entertainment、SM Entertainment、Piccomaを軸に、グローバルファンダムと知的財産(IP)事業の拡大を目指す。
モビリティ分野では、ロボタクシー、自動運転トラック、スマート物流を成長領域として示した。KakaoMobilityは江南エリアで有料の自動運転タクシーサービスを運営しており、運行台数を8台まで増やす計画だ。あわせて、ロボタクシーと物流分野への投資にも着手しており、ロボタクシーのオペレーターモデルへの進化と、自動運転トラックを基盤とするスマート物流を有望分野に位置付けている。
KakaoXはこのほか、フィジカルAI、仮想資産、グローバルファンダムを主要な成長・投資検討領域に挙げた。
新規投資の対象地域も広げる。これまでDunamu、Korea Credit Data、KADOKAWAなど、国内およびアジア中心だった有望企業投資を、今後は米国を含む海外にも拡大する方針だ。経営権を確保して事業を直接育成する手法と、有望企業への出資を通じて成長を支援する手法を併用する。
Kakaoが示したKakaoXの2030年の主要事業売上目標は10兆ウォン超。KakaoX傘下事業を別会社とみなした場合、2023~2025年の年平均売上成長率は8.6%だったが、今後は各社の事業計画を踏まえ、年平均約13%の成長を見込む。
2025年時点で約5兆6000億ウォンの関連売上を、2030年までに倍近い水準へ引き上げる計算となる。なお、非連結子会社であるKakaoBankの売上は含まない。
◆投資収益の30%を還元、再投資につなぐ
KakaoXが従来の子会社管理会社と異なる点として打ち出すのが、投資収益を資本配分と株主還元に結び付ける仕組みだ。
KakaoXは、子会社から受け取る配当収益の30%を株主に還元する。投資資産の売却で利益が生じた場合も、投資収益の30%を特別配当として還元し、残る70%は新たな投資に充てる。投資で得た収益をすべて社内に積み上げるのではなく、一部を株主に還元したうえで、残りを成長資金として再投入する考えだ。
具体例として、Kakao InvestmentによるDunamu株売却代金1兆6000億ウォンを挙げた。投資元本と税金を除いた投資差益のうち、約30%に当たる3000億ウォンを自社株買いと消却に充てる計画だ。
KakaoXの事業モデルは、単に有力子会社を保有するだけでは成り立たない。既存子会社の成長支援と新たな投資先の発掘を並行して進め、そこで生まれた価値とキャッシュを株主還元と次の投資へ循環させる必要がある。
Kakaoが複数事業・複数企業に分散して担ってきた投資機能を、上場会社の中で再現可能な資本配分の仕組みへ転換できるかどうかが、KakaoXの成否を左右しそうだ。
KakaoはKakaoXを通じ、投資、成長、株主還元、企業価値向上が連動する好循環の構築を目指す。6兆4000億ウォンの投資余力はその出発点であり、今後の企業価値は保有資産の規模そのものではなく、資本配分と投資成果をいかに株主還元と再投資につなげるかにかかっている。