GoogleがAI機能を前面に押し出した新型スマートフォン「Pixel 11」を投入した。Geminiを軸に、買い物や配車、レストラン予約といった操作をAIが肩代わりする構想を打ち出している。ただ、The New York Timesが実機を検証した結果では、AIがアプリ操作の主役になるには、なお課題が残る実態も浮かび上がった。
AIを訴求する「AIスマホ」は各社が相次いで展開しているものの、AIそのものを購入の決め手とみる消費者はまだ多くないとの見方がある。それでも、スマートフォンメーカー各社はAI機能の拡充を続けている。
Googleも毎年、Pixelシリーズに新たなAI機能を盛り込んできた。最新のPixel 11では、ユーザーの作業効率向上を狙うAIソフトウェアを搭載。Geminiをベースに、食料品の購入、配車サービスの手配、レストラン予約などを支援する機能を備えた。
The New York Timesによると、Pixel 11はGoogleが掲げる「個人向けコンピューティングの再定義」というビジョンの一環に位置付けられる。ユーザーがアプリを個別に開いて操作するのではなく、Geminiを通じて複数の作業をこなすようになれば、将来的にはAIがOSに匹敵する中核的な存在になるという見方だ。
モバイルプラットフォーム市場でGoogleと並ぶAppleも、9月に新たなAIアシスタント「Siri AI」を公開する予定だ。
Pixelシリーズは販売規模やシェアこそ限定的だが、業界への影響は小さくない。AppleやSamsung Electronicsを含む多くのスマートフォンメーカーが、Pixelで先行投入された機能や発想の一部を自社製品に取り込んできたためだ。このため、Pixel 11に搭載されたAI機能は、今後のスマートフォン各社の方向性を占う材料としても注目される。
Pixel 11には、ユーザーに代わって写真を撮影・選別する「Magic Capture」も搭載された。Googleはこのほか、動画やポッドキャストをユーザーの好みの言語に自動翻訳する機能も披露している。
では、AIはスマートフォン購入の決定打になり得るのか。The New York Timesのブライアン・X・チェン記者は、1100ドル(約16万5000円)の「Pixel 11 Pro」を約1週間試用し、その使い勝手を検証した。
同記者は、自動吹き替え機能については高く評価した一方、アプリ操作やカメラ利用をAIに委ねる流れがすぐに定着するとは見ていない。Gemini経由でOpenTableやInstacartを使ってみたものの、レストラン予約や食料品の注文は、自分で直接アプリを操作した方が効率的だったという。Geminiによるアプリ操作は手順が多く、動作もスムーズさを欠いたと指摘した。
一般消費者が近い将来、こうした形でAIにアプリ操作を任せることに慣れる可能性は低いとの見方も示した。これに対しGoogleは、OpenTable利用時に確認された問題の解消に取り組んでいると説明している。
「Magic Capture」についても、評価は割れた。椅子に座るペットの写真を選ぶ用途では好印象だった一方、2歳の娘を撮影した際には無表情のカットが選ばれたという。チェン記者は、動画を見返すと、目は閉じていても満面の笑みを浮かべた写真の方が気に入ったとし、写真撮影では大量に撮って後から気に入った一枚を選ぶ過程自体に楽しさがあると指摘した。撮影と選別をAIに任せることには、どこか味気なさが残るというわけだ。
一方、自動吹き替え機能は印象的だったと評価した。AIが話者の声質まで再現しようとする水準に達しているためだ。ただ、チェン記者は現時点のAIを、スマートフォンの使い方そのものを塗り替える新たなインターフェースというより、必要な場面で呼び出して使う「もう一つのアプリ」に近い存在だと位置付けた。
もっとも、Googleがこれまで提供してきたAI機能の中には、すでに定着したものもあるという。写真から不要な写り込みをワンタップで消す機能や、迷惑電話を遮断する通話スクリーニング、録音した通話内容の自動文字起こしなどがその例だ。ライブ吹き替えについても、対応言語の拡大と精度向上が進めば、普及が進む可能性は大きいとみている。