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暗号資産やブロックチェーンの社会実装が進まない背景として、規制対応の重さや、利用者が利便性を実感できるサービスの不足が改めて浮き彫りになった。日本で開かれた「WebX 2026」のパネルセッションでは、業界関係者が、今後1〜2年はステーブルコインとUX改善が普及拡大の分水嶺になるとの見方を示した。

ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、22日に開かれた同セッションには、ワタナベ・ソウタ氏(Startale Group CEO)、ミウラ・カズオ氏(シンプレクス エグゼクティブ・プリンシパル)、コンドウ・トモヒコ氏(SBI VC Trade代表)が登壇した。議論では、この10年の暗号資産業界が直面してきた制約と、今後の成長シナリオが主なテーマとなった。

まず論点となったのは、企業での導入が期待ほど進まなかった点だ。ミウラ氏は、ブロックチェーン技術そのものには十分な可能性があった一方、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れ、実際の業務や事業モデルへの実装に至らないケースが多かったと説明した。

煩雑な書類手続きや既存システムとの整合といった現実的な制約も、導入の足かせになったという。一方で、企業のDXが進めば、ブロックチェーンの活用余地も広がるとの見通しを示した。

暗号資産交換業界では、相次ぐハッキング被害とその後の規制強化が、市場拡大の重荷になったとの認識が共有された。コンドウ氏は、コインチェック、ビットポイント、DMM Bitcoinなどで大規模な流出事案が起きるたびに、規制対応と信頼回復に多くの時間とコストを要したと指摘。業界全体の規制環境も一段と厳格化したと述べた。

もっとも、市場基盤は着実に広がっているとの見方も示された。ミウラ氏は、日本の暗号資産口座数がすでに1,000万を超え、産業として一定の定着段階に入ったと説明。少額投資非課税制度(NISA)利用者数と比べても、無視できない規模に成長したとの認識を示した。

コンドウ氏も、暗号資産業界は金融機関並みのコンプライアンス体制や監督対応を求められる方向へ変化していると語った。

一方、パネリストの間では、ブロックチェーンは消費者が直接意識する技術というより、表からは見えにくい基盤インフラとして浸透していく可能性が高いとの見方で一致した。ワタナベ氏は、生成AIが利用者自身が価値を体感しやすい技術であるのに対し、ブロックチェーンはサービスの裏側で運用効率を高める技術だと整理した。

その具体例として、少人数で運営される分散型取引所「Hyperliquid」を挙げ、場合によってはナスダックに匹敵する取引量を処理していると紹介。コスト削減や運営効率の面で競争力を示していると評価した。

大衆化に向けた最後の課題として挙がったのは、生活者が日常の中で利便性を実感できるかどうかだ。コンドウ氏は、ステーブルコインが日常的な決済手段として定着するには、まず消費者が使いやすさを直接感じられるサービスの登場が必要だと指摘した。

ミウラ氏も、ステーブルコインのインフラ整備に加え、ブロックチェーンの利点を実際のビジネスモデルへ結び付ける工程がなお残されていると分析した。

ワタナベ氏は、今後1〜2年が業界の分水嶺になるとみる。生成AIが基盤技術の登場後、急速に一般向けサービスへ広がったように、ステーブルコインでも既存の金融サービスと遜色ないUXを備えたアプリケーションが登場すれば、普及のスピードは大きく加速し得ると述べた。

業界関係者は、2030年に向けて暗号資産市場がさらに拡大する可能性にも言及した。コンドウ氏は、日本の個人金融資産に占める暗号資産の比率は足元で1%未満にとどまる一方、今後4年以内に10%水準へ拡大する可能性があるとの見方を示した。

さらに、人工知能とブロックチェーンの融合が本格化すれば、AIエージェントが自らウォレットを保有し、取引を行う時代が到来し得るとも展望した。

パネリストは、暗号資産の将来について、新たなサービスを生み出すだけでなく、既存の金融やデジタルサービスを支える基盤インフラとして自然に浸透していく可能性が高いとの認識で一致した。今後2年は、規制環境の改善とステーブルコイン普及の行方が、ブロックチェーン産業の次の成長局面を左右する焦点となりそうだ。

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