ETRIコンファレンス2026で将来ビジョンを説明するパク・セウン韓国電子通信研究院(ETRI)院長。写真=ETRI

韓国電子通信研究院(ETRI)は9月1日、2035年までに研究の全工程を自律的に担う「研究所長級AI科学者」の実現を目指す方針を明らかにした。創立50周年に合わせて公表した将来ビジョンの一環で、AI半導体や光ネットワーク、コンピューティングソフトウェアを横断する技術開発も進める。

ETRIは同日、ソウル市良才のエルタワーで「ETRIコンファレンス2026」を開催し、将来ビジョンとAI革新戦略を公表した。会場には産学官の関係者ら約600人が参加した。

パク・セウン院長は、新たな機関ビジョンとして「AI・DX革新で導く、共に生きる温かな世界」を提示した。AIとデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、人の作業や移動を支援し、さまざまな制約の克服につなげるなど、「人のための技術」を具現化する考えを示した。

その実現に向けた改革方針として掲げたのが「4Eコンビネーション」だ。本質的革新(Essential)、開放的包摂(Embracing)、研究活力向上(Exciting)、卓越した成長(Excellent)を柱に、研究開発(R&D)と経営改革を一体で進める。

R&Dでは、国家の成長エンジンの確保に向け、AI-Native 6G・衛星通信、安全な汎用人工知能(AGI)、立体空間メディア、フィジカルAI、公共・産業AI・DXの5分野に研究開発力を集中する。戦略性の低い分野は再編・統合し、ミッション型のフラッグシップR&Dと分野別の中核技術の確立を進める方針だ。

◆2035年に「研究所長級AI科学者」 研究の全工程の自律化へ

中でも中核に据えたのが「みんなのAI科学者」戦略だ。科学技術R&Dの進め方そのものを変える取り組みで、2035年までに仮説立案から実験、分析、検証まで研究全工程を自律的に遂行する「研究所長級AI科学者」の実現を目指す。

まずは研究者がAIと協働しながら仮説を立て、実験を進める「AI共同研究者」の段階を目指す。次の段階では、研究者の監督の下でAIが科学エージェントと実験室を運用する自律科学システムへ高度化し、最終的にはAIが複数の研究課題を並行して進める全工程自律研究システムの構築につなげる。

これに向けてETRIは、科学特化型のファウンデーションモデル、専門AIエージェント、仮説生成・優先順位付け、実験設計、エージェントオーケストレーション、科学AIオペレーティングシステム(OS)、自律実験室といった中核技術を確保し、韓国型AI科学者プラットフォームとして統合する計画だ。

◆NAISと連携しAI科学者基盤構築 AIDCは「トークン工場」

国家科学AI研究センター(NAIS)と連携したAI科学者エコシステムの構想も示した。NAISがデータ標準、共通ファウンデーションモデル、GPUプールなどの共通基盤を提供するハブを担い、ETRIなどの政府系研究機関が分野別の専門研究を担う「強いハブ+強いスポーク」モデルを想定する。

AIインフラ競争を見据えたAIDC戦略も打ち出した。ETRIはAIDCを、電力とデータを投入してAI演算能力とトークンを生み出す「トークン工場」と定義。AI競争の主戦場が個別半導体からデータセンター全体のインフラへ移りつつあるとの見方を示した。

2031年までには、12.8Tbps級の光I/Oチップレット、3.2Tbps級の光トランシーバー、主要光素子技術を段階的に確保する計画だ。その後は単一拠点のデータセンターから広域分散型AIDCへ拡張し、2032年以降は地上と宇宙のコンピューティング資源を連携させる協業型AIDCへ発展させる目標を掲げた。

パク院長は「この50年間、ETRIは韓国がICT強国へ飛躍する節目ごとに、国家と国民に必要な技術を生み出してきた」と述べた。その上で、研究機関、大学、企業の垣根を越えた開放と協力を進め、AI科学者やAIDCをはじめとする国家的ミッションを主導していく考えを示した。

キーワード

#ETRI #人工知能 #AI半導体 #AI-Native 6G #衛星通信 #AGI #AIDC #光ネットワーク #GPU #R&D
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.