韓国と米国が合意した総額3500億ドル(約52兆5000億円)の対米投資を巡り、このうち2000億ドル(約30兆円)を充てる戦略投資の詳細協議が最終段階に入った。焦点は、韓国の半導体企業に認める無関税輸出枠の算定方式と、対象品目の範囲だ。
キム・ジョングァン産業通商資源相は1日、訪米に向けて出国する際、対米投資に関する案件を最終的に整理する必要があると記者団に語った。産業通商資源省によると、キム氏は1日からノースカロライナ州、ワシントンDC、ルイジアナ州を順に訪問する。ハワード・ラトニック米商務長官との会談も予定しているという。
韓国政府は、昨年の米国との貿易合意に基づき、3500億ドルのうち1500億ドル(約22兆5000億円)を造船協力に配分した。残る2000億ドル分については、戦略投資として米側と具体的な案件を詰めている。
交渉では、米国が半導体関税を韓国企業の現地生産拡大を促す手段として活用しようとしている点が重しになっている。韓国側では、投資規模に応じた無関税輸出枠を文書で明記するよう求める声が出ている。
こうした中、交渉相手のラトニック長官は、企業ごとの米国内生産計画に連動させて無関税の輸入枠を設定する方式を志向しているとされる。Politicoは先月27日、トランプ政権が半導体チップに加え、ノートPCやゲーム機、データセンター向けサーバーなど、半導体を搭載した完成品まで関税対象に含める案を検討していると報じた。
報道によると、国別の関税率や輸入枠の設定に加え、主要半導体メーカーごとに国別の基準を適用するかどうかも検討対象に上っている。
米国が検討している枠組みは、対米投資額に応じて半導体を無関税で米国へ輸出できる上限を定めるものだ。この仕組みでは台湾が先行している。
米国は、台湾による2500億ドル(約37兆5000億円)の半導体投資計画を条件に、相互関税を25%から15%へ引き下げた。さらに、米国内で半導体工場を建設中の台湾企業には、建設期間中に新工場の生産能力の2.5倍まで無関税輸出を認め、すでに米国内工場を完成させた企業には生産能力の1.5倍まで無関税輸出を認めるとした。
Financial Times(FT)によると、米商務省はTSMCの対米投資計画と連動させ、Amazon、Google、Microsoftなど米大手テック企業による半導体輸入を関税免除とする案も検討している。TSMCに認められた免除枠を米国内の顧客企業に配分できれば、それら企業は半導体を無関税で輸入できることになる。
この場合、対米投資を実行した企業が、自社顧客の関税負担の軽減にもつながる構図となる。
一方、韓国は他国より不利に扱わないとの最恵国待遇の約束は得たものの、詳細はなお不透明だ。台湾に適用された「2.5倍」「1.5倍」の算定方式が韓国にも同様に適用されるのか、どの品目が免除対象に入るのかは決まっていない。
加えて、合意内容が書面で明文化されていないことも混乱要因となっている。昨年8月、ドナルド・トランプ米大統領は半導体に100%の関税を課す一方、米国内で生産施設を建設中であれば生産開始前でも関税を課さない考えを示した。
今年1月には、NVIDIAのAI半導体「H200」のように、米国へ輸入された後に再輸出される半導体に25%の関税を課す大統領布告に署名した。2月には米連邦最高裁が相互関税を違法・無効と判断し、圧力はいったん後退した。
もっとも、短期的な影響は限定的との見方もある。DRAM、NANDフラッシュ、高帯域幅メモリ(HBM)の供給が世界的に不足しているためだ。HBMはDRAMを垂直に積層し、データ処理速度を高めたメモリを指す。
Samsung Electronics、SK hynix、Micronは生産能力の拡大を進めているが、増産分が本格的に市場に出るのは2028年以降とされる。メモリ価格が上昇する中で関税まで上乗せされれば、AIデータセンター向けメモリを調達する米大手テック企業の負担は一段と重くなる。
韓国政府は先月26日、政府世宗庁舎でパク・ジョンソン通商交渉本部長主宰の第59回通商推進委員会を開き、関税・非関税措置や対米投資などの懸案への対応方針を協議した。産業通商資源省は、関係省庁間で情報共有と協議を進め、企業の安定的な輸出と投資を支えるため政府横断で対応するとしている。
またキム氏は先月16日から19日までワシントンDCを訪れ、ラトニック長官と2日連続で会談した。産業通商資源省は、双方が対米戦略投資の候補案件を巡る主要争点と今後の日程を協議したと説明している。
投資規模が無関税輸出枠に換算される仕組みである以上、今回の交渉では、関税免除の適用倍率と対象品目の範囲を文書に盛り込めるかが最大の争点となる。業界関係者は「現時点では不透明な点が多いが、台湾が免除を受けた以上、韓国にも同程度の扱いを期待している」と話した。