Ethereum(ETH)が、人工知能(AI)投資サイクルにおける次の受け皿になるとの見方が浮上している。Fundstratのトム・リー氏は、AI関連の投資マネーが半導体、とりわけメモリ半導体関連からEthereumへ移り始めている可能性があると指摘した。ただ、その裏付けとなる資金フローデータは示されておらず、現時点では市場パフォーマンスをもとにした解釈の域を出ていない。
米ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、リー氏は22日(現地時間)、X(旧Twitter)への投稿で「AI Downstream取引は引き続き強い」と述べ、AI投資資金がメモリ半導体メーカーからEthereumへ向かう流れが出ていると主張した。
リー氏が根拠として示したのは、直近1カ月におけるEthereumとメモリ半導体関連ETFの騰落率の差だ。公開した資料によれば、Ethereumは約24%上昇した一方、Roundhill Memory ETFは同期間に約38%下落。差は72ポイントに達した。
Fundstratはあわせて、両資産のリターンが足元で逆方向に動いていることを示す比較資料も提示した。リー氏は、こうした値動きを踏まえ、AI投資家の関心がハードウエアからデジタルインフラへ移りつつある可能性があるとみている。
もっとも、この分析だけで機関投資家の資金移動を実証できるわけではない。Fundstratは、半導体関連銘柄から流出した資金が実際にEthereum関連商品へ流入したことを示す資金フローデータを公表していない。現段階では、直近1カ月の相対パフォーマンスから投資家心理の変化を推し量る内容にとどまる。
リー氏はこれまでもEthereumに強気な見方を示してきた。AIサービスの普及が進むほど、分散型決済やRWA、オンチェーン金融インフラへの需要が拡大し、その中心にEthereumネットワークが位置する可能性が高いとの立場だ。
今回の分析も、その延長線上にある。AI産業における投資の焦点が、チップやサーバーといったハードウエアから、実際のサービスを支えるブロックチェーンインフラへ広がる可能性があるという見方だ。
比較対象としてメモリ半導体ETFを取り上げた点も、この論理と整合する。Roundhill Memory ETFは2026年4月に上場した商品で、高帯域幅メモリ(HBM)、DRAM、NANDフラッシュなどのメモリ半導体企業に集中的に投資するETFだ。メモリ半導体は大規模AIモデルの学習や推論に欠かせない中核部品とされ、AIインフラ投資の代表的な指標の1つとみなされている。
ただ、メモリ産業そのものの成長が鈍化したと結論づけるのは早い。市場調査会社IDCは、世界のAI関連支出が2029年に7580億ドルへ拡大すると予測しており、企業によるAI導入の広がりに伴って、AI向けストレージとメモリ需要も着実に増加すると見込んでいる。
市場調査会社TrendForceも最近のリポートで、2026年第3四半期の汎用DRAMの契約価格は13〜18%、NANDフラッシュ価格は10〜15%それぞれ上昇すると予想した。AIサーバー需要の拡大が、メモリ価格を引き続き押し上げるとの見方だ。
このため、足元のメモリ半導体ETFの軟調な推移は、業況悪化というよりも、利益確定売りや半導体セクター内でのポジション調整による短期的な調整局面である可能性もある。実際、リー氏もメモリ関連資金が流出した背景について、具体的な説明はしていない。
暗号資産市場では、今回の主張をEthereumの新たな投資ストーリーとして受け止める動きも出ている。これまでDeFiやスマートコントラクトの基盤として評価されてきたEthereumが、AI時代のデジタルインフラ資産として再評価される可能性があるためだ。
一方で、1カ月の騰落率の差だけで機関投資家マネーの構造的なシフトを断定するのは時期尚早だとの見方も根強い。今後は、半導体関連銘柄が反発する局面でもEthereum関連商品への資金流入が続くのか、さらに実際の機関投資家の資金フローデータで裏付けられるのかが、今回の主張を検証するうえでの焦点になりそうだ。