ステーブルコインのイメージ(写真=Reve AI)

ドル連動型ステーブルコインの拡大が、新興国の資本規制や為替規制を迂回し、通貨主権と金融安定を損なう可能性がある――。国際決済銀行(BIS)の研究チームは、こうした見方を示し、新たな政策対応の必要性を指摘した。

米Cointelegraphが7月21日(現地時間)に報じたところによると、BISの研究チームは、ステーブルコインの普及を新たな形の「デジタル・ドル化」と位置付けた。各国の通貨主権や金融安定にとって、新たな課題になり得るとしている。

研究チームは、約130カ国の外貨預金の動向と、ドル連動型ステーブルコインへの資金流入を比較した。いずれもマクロ経済の不安が強まる局面で需要が増える傾向が確認されたが、外貨預金と異なり、ステーブルコインへの資金移動は資本規制や為替規制の影響をほとんど受けなかったという。

背景には、ステーブルコインが銀行システムや既存の規制の枠外でも流通しやすい点がある。自国通貨が不安定で、金融サービスへのアクセスも限られる国では、家計や企業が銀行の外貨預金ではなく、ドル建てトークンに資産を移す可能性があると分析した。

ドル需要が既存の金融システムの外側に移れば、中央銀行による為替管理や資本規制の実効性は低下しかねない。現地通貨の代わりにドル連動型トークンを保有し、決済に使う比率が高まるほど、自国通貨への需要は細り、通貨当局の政策効果も及びにくくなるためだ。

一方、今回の研究では、外貨預金の拡大が金融政策の波及経路を直接弱める明確な証拠は確認されなかった。ただ、外貨預金比率が高い国ほど、高インフレのリスクにさらされやすい可能性が示された。

研究チームは、ステーブルコインの拡大に対応する新たな金融安定化策が必要だと指摘した。既存の銀行規制や外貨預金管理の枠組みだけでは、国境を越えて移動するドル連動型トークンを十分に管理するのは難しいとみている。

こうした動きは、一部の新興国ですでに表面化している。国際通貨基金(IMF)は最近のナイジェリアに関する分析で、家計や零細事業者がドル連動型ステーブルコインを越境決済や送金、ドル建て資産の確保に利用しているとした。高インフレや通貨価値の下落、限られた外貨アクセスが需要を押し上げているという。

中南米でもステーブルコインの利用は急速に広がっている。暗号資産取引所Bitsoによると、2026年上半期のステーブルコイン決済規模は前年同期比81%増となった。昨年の中南米の暗号資産購入額に占めるCircleのUSDCとTetherのUSDTの比率は40%に達し、両者の合計がビットコインを上回るのは初めてだったという。

今回の研究は、ステーブルコインが単なる決済手段にとどまらず、資本規制や為替規制の機能そのものに影響を及ぼし得ることを示した。とりわけ新興国では、銀行システムの外でドル需要を増やす経路となる可能性があり、政策対応の重要性が高まっている。

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