米国のデータセンターの電力需要が2035年に現在の4倍に拡大し、総発電量の20%を占める見通しとなった。人工知能(AI)の学習・推論需要が急増し、データセンター建設が想定を上回るペースで進む一方、送配電網の整備や系統接続が追い付かず、電力供給がAIインフラ投資の制約要因として浮上している。
米メディアTechCrunchが21日(現地時間)に報じた。BloombergNEF(BNEF)は最新リポートで、今後10年にわたってAI向け計算需要が大幅に伸び、米国のデータセンターの電力消費が急増するとの見方を示した。
リポートによると、米国のデータセンター設備容量は今後10年以内に約200ギガワット(GW)に達する見込み。このうち半分近くが、AIの学習・推論向けに使われるという。
AIチップ需要も米国に集中する見通しだ。BNEFは、電力需要ベースでみると、2033年までに世界のAIチップ需要の64%を米国が占めると予測した。AIコンピューティングインフラの中心が当面は米国にとどまることを示している。
今回の予測は、前年時点の想定から大幅な上方修正となった。BNEFが示した2035年のデータセンター電力需要は、昨年12月時点の予測を83%上回る。米国内でデータセンター建設が想定以上のペースで進んでいることが背景にある。
他の調査機関も同様の見方を示している。米電力産業研究所(EPRI)は昨年、データセンターの電力需要見通しを2倍超に引き上げた。S&Pも昨年10月から今年4月にかけて、関連予測を3分の1超上方修正している。
課題は、新設データセンターの多くが、すでに電力供給余力の乏しい地域に集中している点にある。BNEFは、今後10年に新設されるデータセンターの大半が、電力需給の負担が重い地域に接続されるとみている。
バージニア州からイリノイ州までを管轄する米最大の系統運用機関PJM Interconnectionでは、域内電力需要の34%をデータセンター向けが占める見通しだ。テキサス州の電力網を運用するERCOTも、データセンターが発電容量の22%を使うと試算した。
PJMはすでに全米有数のデータセンター集積地を抱える。ただ、発電所や大口需要家からの系統接続申請が集中し、接続手続きの遅れが続いてきた。負荷増大を受け、新規電源の系統接続申請を4年間停止した経緯もある。
PJMは今年4月に接続手続きを再開したが、需給の逼迫はなお続く。米電力会社American Electric Power(AEP)は、状況の悪化を受けてPJMからの離脱の可能性にも言及した。過去1年間で同地域の電力価格が76%上昇したことも、供給圧力の強まりを映している。
それでもデータセンター需要は鈍っていない。直近のPJM容量オークションでは、データセンター関連の申請が電力需要申請全体の38%を占めた。送配電網の混雑やコスト上昇にもかかわらず、AIデータセンターへの投資が続いていることを示す。
米国がAI計算需要の中心にとどまるとしても、データセンターの電力需要は世界的に拡大する見通しだ。BNEFは、AI導入が現在のペースで進んだ場合、2033年までに世界のデータセンターが新たに必要とする電力は年間1935テラワット時(TWh)に達すると推計した。インドの年間電力消費量に匹敵する規模だ。
市場では、AIインフラ競争の焦点がデータセンター建設そのものから、電力確保へ移りつつあるとの見方が強まっている。AI向け需要の拡大に伴い、発電能力の増強と送配電網の整備が進むかどうかが、今後のデータセンター投資のスピードを左右する要因になりそうだ。