中国の人工知能(AI)企業Zhipuが、中国製AIチップのみで稼働する1ギガワット(GW)級のAIコンピューティングセンターを完成させたことが明らかになり、同社株が香港市場で急伸した。米国の先端半導体輸出規制が続く中、自社主導でAI基盤の整備を進めているとの見方が広がっている。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が21日、Zhipuは中国製AIチップだけで運用する1GW規模のAIコンピューティングセンターを完成させたと報じた。同センターは、同社の大規模言語モデル(LLM)「GLM」シリーズの学習と推論に充てるという。
この報道を受け、香港市場に上場するZhipu株は同日、37%高の121.9香港ドルで取引を終えた。直前の1週間で40%超下落していたが、大規模な計算基盤の確保が好感され、急反発した格好だ。
同社はAIインフラの強化に加え、ソフトウェア面の拡充も進めている。中国科学院発のインフラソフトウェア企業Qubilasを買収したと伝えられた。Qubilasは、異種コンピューティング環境で複数メーカーのAIチップを効率的に活用するため、コンパイラ、ランタイムシステム、推論エンジンなどを開発してきた企業という。
今回の買収により、Zhipuはハードとソフトの両面を押さえた形となる。新たなコンピューティングセンターがAI学習に必要な計算能力を担い、Qubilasの技術が中国製AIチップの利用効率を高めて推論コストを抑え、モデル展開のスピード向上につながるとみられる。
こうした動きは、米国の半導体輸出規制の下で、中国のAI企業が独自のエコシステム構築を急ぐ流れに沿うものだ。米政府は先端AIチップの対中輸出を制限しており、Zhipuも昨年、米商務省産業安全保障局(BIS)の取引制限対象に加えられた。
当時Zhipuは、こうした措置が事業に大きな影響を及ぼすことはないとしたうえで、LLM開発に必要な中核技術基盤は自社で確保していると説明していた。今回の大規模データセンター整備も、海外の先端チップへの依存を引き下げ、自前のAIインフラを強化する戦略の延長線上にあるとみられる。
中国国内ではAIコンピューティング需要も急拡大している。HSBCは6月のリポートで、中国のAIコンピューティング需要が2025年比で5倍超に拡大し、2028年には約5GW規模に達するとの見通しを示した。生成AIの普及に伴い、大規模モデルの学習需要と推論需要が同時に膨らんでいるという。
Zhipuは、短期業績よりも長期的な技術競争力の確保を優先する姿勢も鮮明にしている。共同創業者のタンジェ氏は最近の社内メモで、AIアプリケーションの短期的な収益化より、汎用人工知能(AGI)時代を見据えた研究開発に注力する方針を示した。
業界では、Zhipuが自前のコンピューティングセンターとAIソフトウェア技術を同時に確保し、米国の規制下でも独自のAIエコシステム構築を本格化しているとの見方が出ている。今後はGLMの性能向上と推論効率の改善が、中国AI産業の競争力を占ううえで重要な焦点となりそうだ。