北大西洋条約機構(NATO)は7月20日、軍事通信や監視、ミサイル追跡の強化に向けた共同衛星ネットワーク構想「HALO」を発表した。デンマークやカナダ、ドイツなど8カ国が参加し、各国が保有する衛星システムを、所有権や統制権を維持したまま連携させる。
米ITメディアのTechRadarによると、構想はトルコ・アンカラで開かれたNATO首脳会議の国防産業フォーラムで公表された。
HALOは、「宇宙基盤ハイブリッド連合多層作戦」を意味するプロジェクト。参加国はデンマーク、カナダ、フィンランド、ドイツ、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、トルコの8カ国だ。
柱となるのは、各国が個別に運用してきた衛星システムを共通の宇宙フレームワークで接続する点にある。各国は自国衛星の所有権と統制権を保持したまま、必要なデータを相互に連携する。
NATOは、各国が分散して運用する既存の衛星網だけでは、有事の環境に十分対応しきれないとみている。加盟国ごとに独立して運用される衛星群は、サイバー攻撃やジャミング、物理的破壊に対して脆弱性が高まりやすいためだ。
NATOのラドミラ・シェケリンスカ事務次長は、こうした分断された体制では、大容量データの迅速な伝送にも支障が出ると指摘した。
同事務次長はHALOについて、「高速通信、情報共有、ミサイル追跡で特に有効だ」と説明。単一国家の衛星群では避けにくいコスト、時間、カバレッジの制約を乗り越える狙いがあるとした上で、「連合宇宙作戦の新たな章を開く」と述べた。
HALOは、単一国家が統制する新たな共同衛星群を創設する構想ではない。NATOは各国の既存能力を束ねることで、連合作戦における相互運用性の向上を目指す。実現の成否は、各国の統制権を維持しつつ、安全にデータ共有できるかどうかにかかっている。
もっとも、HALOは現時点で検討段階にある。最終的な衛星群の設計や配備時期、実際の衛星数は決まっておらず、共同宇宙インフラの方向性を具体的な運用体制へ落とし込む作業が残されている。
今回の発表は、NATOによる宇宙インフラ強化の動きと軌を一にするものでもある。カナダは、同盟資産を迅速に軌道へ投入する打ち上げ能力を検討する多国間プログラム「STARLIFT」に、15番目の加盟国として加わった。
STARLIFTは、同盟全域の宇宙港を活用し、短期間で衛星を打ち上げる選択肢を広げることに重点を置く。
またスペインは、NATOの宇宙基盤の継続監視構想に19番目の参加国として加わった。アトランティック・コンステレーション衛星が提供する映像を活用し、沿岸監視を支援する方針だ。
トルコも、地域の宇宙能力拡大に向けて高解像度衛星2基を追加開発する計画を示した。
NATO加盟国はこのように、共同ネットワークと各国単位のシステムを併用しながら宇宙戦略を拡大している。HALOは、その中核として連合軍の通信速度と情報共有の枠組みを左右する試金石となる可能性がある。