政府が全国民向けAIサービス「みんなのAI」の立ち上げを本格化する。ただ、事業者の選定やサービス評価で、共通ベンチマークなど客観的な検証基準が十分に示されていないとして、実効性を懸念する声が出ている。
科学技術情報通信部と情報通信産業振興院(NIPA)は21日、ソウル市麻浦区のFront1で「みんなのAI」事業説明会を開いた。
「みんなのAI」は、国産AIモデルを活用した汎用AIチャットボットと公共AIエージェントを国民に提供する事業だ。政府は、海外AIサービスへの依存を抑えるとともに、AIへのアクセス格差を縮小し、幅広い国民がAIの恩恵を受けられる環境整備を目指す。
科学技術情報通信部は、8月までに公募を締め切り、9月中に参加企業またはコンソーシアムを選定する方針だ。選定先には、政府が確保したB200 GPU 512基を配分する。
参加企業には国産AIモデルの活用を義務付ける。自社で事前学習した独自のファウンデーションモデルに準じる国産モデルの比率を50%以上とし、他社開発の国産モデルも30%以上組み込むことを求める。高難度の推論やマルチモーダル機能に限っては、海外製モデルの限定利用を認める。
選定企業は9月末にベータ版を公開し、12月には全国民向けのAIチャットボットサービスを提供しなければならない。汎用AIチャットボットは無料かつ利用量の制限なしで提供するのが原則だ。2027年以降はAIエージェントへと機能を高度化し、「全国民1人1AIエージェント」の実現を構想している。
一方で、サービス性能をどう客観的に評価するのかはなお見えにくい。
公募案内によると、参加企業は年度ごとの目標と成果指標を具体的かつ定量的に提示する必要がある。活用・普及に関する成果指標は、事業者が自ら検証可能な形で設計する。利用者数やトークン使用量の目標値、最低基準も各社が設定し、必要なGPU規模とその算定根拠を提出する仕組みだ。
科学技術情報通信部は、各社の事業計画書を基に、AIモデルの競争力、GPU活用計画、サービス開発計画などをまず書面で審査する。その後、最終順位を決めるためのプレゼンテーション審査を実施する。
プレゼンテーション審査では、「サービスの利便性」と「利用者の獲得・維持戦略」が50点と最も配点が高い。一方、「サービス品質および安全性」は30点、「回答の正確性、有用性、一貫性、文脈理解度、性能検証計画」などをみる「サービス品質および性能」は10点にとどまる。候補サービスを横並びで比較する共通ベンチマークや、選定後に性能をどう公開するのかといった手順は、公募案内には明記されていない。
説明会でも、科学技術情報通信部は今後ベンチマークを公開するかどうかについて具体策を示さなかった。AIサービスは利用者が実際に使いながら性能を判断する性格が強く、競争力は利用者数にも表れる、という認識を示した。
スケジュールの厳しさも課題として残る。科学技術情報通信部は9月に事業協約の締結と同時にベータ版を開始し、12月に正式サービスへ移行する計画だ。選定から全面提供まで3カ月足らずしかない。ベータ版の対象範囲や運用方式も各社に委ねられるため、十分な検証が可能なのかを不安視する見方もある。
科学技術情報通信部の関係者は、「海外製サービスの無料版に匹敵する性能の『みんなのAI』を提供したい」と説明した。その上で、「利用者数が大きく伸びない場合は、年次評価を通じて新たな事業者を選定する必要がある。今後も検討を重ねながら進めていくべき課題だ」と述べた。