OpenAIの未上場株に対する投資家の引き合いが、セカンダリー市場で持ち直している。2026年上半期はAnthropicに関心が集まっていたが、新たなAIモデルの投入や企業向けサービスの拡大を受け、OpenAIを再評価する動きが出てきた。
Business Insiderが20日、報じた。OpenAIとAnthropicはいずれも未上場企業のため、投資家はセカンダリー市場で既存従業員や初期投資家の保有持ち分を取得する形で投資する。
セカンダリー市場は取引量と流動性が限られる。このため、企業価値の評価は上場株のように日々形成される市場価格ではなく、実際の取引事例をもとに算定される。
市場では2026年1〜3月期、OpenAIに対する投資家心理が大きく冷え込んだとの見方が広がっていた。成長鈍化への懸念に加え、経営陣の離脱や健康問題、Anthropicとの競争激化、イーロン・マスク氏との訴訟などが重荷になったためだという。
Practical Venture Capitalの創業者で最高投資責任者(CIO)を務めるデイブ・マクルーア氏は、ここ1カ月で市場の空気が変わったと話す。2026年4〜6月期の初めごろにはOpenAIのセカンダリー株への関心が大きく低下していたが、足元では需要が戻りつつあるという。
もっとも、優位にあるのは依然としてAnthropicだ。未上場株取引会社Rainmaker Securitiesのグレン・アンダーソンCEOは、現在もAnthropic株を探す投資家の方がOpenAIを上回ると明らかにした。
その一方で、1カ月前と比べるとOpenAI株への買い意欲も目立って強まっていると付け加えた。
投資家心理の回復を支えている要因の1つが、製品競争力の改善だ。OpenAIは先月、主力モデル「GPT-5.6 Sol」を公開し、今月には「GPT-5.6 Terra」と低価格版の「GPT-5.6 Luna」を投入した。
外部ベンチマークでは、GPT-5.6 Solが上位の性能を示した。一方で、Anthropicの最新モデル「Claude Mythos」と「Fable」にはやや及ばないとの評価もある。
それでも、企業向けサービスの伸びが投資家の期待を押し上げている。プレIPOのテクノロジー企業取引プラットフォームAugmentの共同創業者、アダム・クロウリー氏は、投資家が再びOpenAIに戻りつつあると語った。
Neostellaのマーク・クラインCEOは、OpenAIが最近、AIコーディングエージェント「Codex」と業務プラットフォーム「ChatGPT Work」の月間アクティブユーザー数が合計900万人を超えたと公表した点に注目する。
同氏は、この成長ペースは際立っていると指摘。エージェント型AIが初期の開発者中心の需要を超え、より広範な専門業務のワークフローへ浸透し始めていることを示していると評価した。
そのうえでOpenAIについて、コーディングやリサーチ、知識労働全般でのモデル性能の改善を、実利用の拡大につなげることを重視しているようだと述べた。
セカンダリー市場の価格動向にも変化が出ている。これまではAnthropic株がOpenAIより割安な水準で取引されるケースが多かったが、足元ではむしろOpenAIの方が相対的に割安だとの見方も出ている。
一部の投資家は、OpenAI株を買い持ちし、Anthropicの保有分をヘッジする戦略まで検討しているという。
企業価値の差はなお大きい。Anthropicは最近、セカンダリー市場で約1兆2000億ドル(約180兆円)の企業価値が意識されている。OpenAIはセカンダリー取引プラットフォームCaplightの基準で、約9330億ドル(約139兆9500億円)水準で取引されている。
OpenAIのセカンダリー市場での評価額は、直近3カ月で約20%上昇した。
サム・アルトマンCEOも最近、X(旧Twitter)への投稿で「過去12カ月は会社の歴史の中で最高の時期ではなく、その責任の大半は自分にある」としたうえで、「これからの12カ月はこれまでで最高になる」と自信を示した。
競争環境はさらに厳しさを増している。アルトマン氏の投稿と同じ日には、中国のAIスタートアップMoonshot AIが、オープンウエイトの大規模言語モデル「Kimi K3」を公開した。
マクルーア氏は、中国のAI企業とオープンソース陣営の攻勢が続けば、OpenAIの成長と収益性の重荷になる可能性があるとみている。
市場では、OpenAIのセカンダリー市場での投資家心理の改善は、製品競争力と企業向け事業の拡大期待を映したものと受け止められている。ただ、投資家の人気ではなおAnthropicが優勢で、中国勢やオープンソース陣営の追い上げも強まっており、OpenAIの持ち直しが持続するかは今後の検証が必要だ。