週90〜120分の筋力トレーニングを行う人は、まったく行わない人に比べ、総死亡リスクが約13%低い――。そんな結果を示す長期追跡研究を、米ハーバード公衆衛生大学院の研究チームがまとめた。
GIGAZINEが19日(現地時間)に伝えた。研究チームは、米国の医療従事者を対象に長期間追跡した3件の研究データを基に、筋力トレーニングと死亡リスクの関連を分析した。
対象者は約15万人。参加者は数年ごとに、筋力トレーニングに加え、歩行、自転車、水泳などの有酸素運動に費やした時間を自己申告した。追跡期間は最長30年に及び、この間に約3万6000人が死亡した。
分析の結果、筋力トレーニングは一定時間までは死亡リスクの低下と関連していた。週90〜120分の筋力トレーニングを行ったグループは、実施しないグループに比べ、総死亡リスクが約13%低かった。
疾患別にみると、心臓病や脳卒中を含む心血管疾患による死亡リスクは約19%低下した。認知症など神経系疾患による死亡リスクも約27%低かった。
一方、がん死亡では別の傾向がみられた。研究では、週60分未満の筋力トレーニングのみが、がん死亡リスクの低下と関連していた。
また、筋力トレーニングの時間を増やせば、それに比例してリスク低下幅が大きくなるわけではなかった。週120分を超えると、追加的なリスク低下は明確ではなかったという。
最も死亡リスクが低かったのは、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた人たちだった。筋力トレーニングを行っていなくても、中強度の有酸素運動を週150分以上実施した場合、死亡リスクは26〜43%低下した。
さらに、これに週60〜120分の筋力トレーニングを加えたグループでは、死亡リスクが約45%低下した。筋力トレーニング単独より、複数の運動を組み合わせた方が効果が大きい可能性を示した形だ。
研究チームは、その背景として筋肉の代謝機能を挙げた。骨格筋は体内でも代謝が活発な組織で、筋力が高まることでブドウ糖の貯蔵や血糖管理に役立ち、2型糖尿病や心臓病の予防につながる可能性があると説明している。
また、筋収縮時に血流中へ放出される生理活性物質「マイオカイン」が、心臓病や糖尿病、がんに関連する炎症の抑制に寄与する可能性もあるとした。
脳の健康や生活の質の面での利点にも触れた。最近の研究では、筋力が高い中高年ほど認知症の発症リスクが低いことが示されており、筋力が高いほど転倒や骨折の影響を抑えるうえでも有利だとしている。
もっとも、今回の研究で因果関係が証明されたわけではない。今回の分析を紹介したイーストロンドン大学の臨床運動生理学の上級講師、ジャック・マクナマラ氏は、筋力トレーニングと死亡率の相関を示したものであり、筋力トレーニングそのものが死亡率を下げる因果関係を立証したものではないと指摘した。
そのうえでマクナマラ氏は、長寿と関連する運動量は一般の人でも十分に達成可能な水準だと説明した。「週2回程度、主要な筋群を鍛える短時間の運動を行い、毎日有酸素運動を取り入れれば、健康全般や長寿に大きく役立つと考えられる」としている。
今回の結果は、筋力トレーニングでは量を増やすこと自体よりも、適切な時間設定と有酸素運動との組み合わせが重要である可能性を示している。