OpenAIが「GPT-5.6」を「Sol」「Terra」「Luna」の3モデル構成で公開し、Anthropicの主力公開モデル「Fable 5」との競争が新たな局面に入っている。コーディング性能では最上位モデルのSolが優位だった一方、文章生成や一般的な対話ではFable 5も強みを示した。性能差が限定的な中、実際の選定では価格や提供条件が重要な判断材料になりそうだ。
米ブロックチェーン系メディアのDecryptが18日(現地時間)に報じた。比較の中心となったのは、GPT-5.6の最上位モデルSolとFable 5だ。
価格面ではGPT-5.6に優位性がある。Solの料金は入力100万トークン当たり5ドル(約750円)、出力30ドル(約4500円)。これに対し、Fable 5は入力10ドル(約1500円)、出力50ドル(約7500円)で、おおむね2倍の水準となる。
下位モデルのLunaは、入力100万トークン当たり1ドル(約150円)、出力6ドル(約900円)と低価格に設定された。Decryptは、Lunaがコーディング性能でAnthropicのOpus 4.8を上回ったと伝えている。Fable 5は19日から従量課金に再移行する予定で、利用コストは一段と重くなる見通しだ。
Fable 5を巡っては、この1カ月で提供条件もたびたび見直された。米政府は6月、Amazonの研究者が脱獄手法を用い、このモデルを意図しない脆弱性スキャナーとして悪用できる問題を確認したとして、使用を禁じた。
その後Anthropicは、Fable 5の提供を全世界で19日間停止し、新たな安全分類器を適用したうえで7月1日に再開した。有料サブスクリプション向け提供の終了時期も7日、12日、19日へと複数回延期された。あわせて同社は、Claude Codeの週間利用上限を50%引き上げた状態を維持するとしている。
ベンチマークでは、コーディング分野でSolの優位が目立った。AIコーディングエージェント評価ではSolが80点となり、Fable 5の77.2点を上回った。使用トークンは半分程度、処理時間も半分以下にとどまったという。
55の専門業務をこなす能力を測る「Agents Last Exam」でも、Solは53.6%となり、Fable 5の40.5%を大きく上回った。「TerminalBench 2.1」でも、最高性能モード基準でSolが91.9%、Fable 5が83.1%だった。
一方で、9つのベンチマークを総合したインテリジェンス指数では、Fable 5がGPT-5.6を1ポイント上回った。総合性能では大きな差がないことを示す結果といえる。
実利用テストでは評価が分かれた。タイムトラベルのパラドックスを題材にした創作文章では、Fable 5が文化的背景と因果関係をより自然に結び付け、高い評価を得た。Solは、物語の構造をより直接的に説明する傾向があったという。
比喩表現を求めるプロンプトでも違いがみられた。Fable 5は物を用いた象徴的な表現が目立ったのに対し、Solは意味を明確に伝える説明的な表現に重きを置いた。
論理問題では両モデルとも同じ誤りを犯した。4人がたいまつ1本を持って橋を渡る古典的な問題を変形した設問に対し、いずれも17分で回答したが、正解は最も遅い人の移動時間に当たる10分だった。代表的な既知の解法を、そのまま当てはめた結果と評価された。
ブラウザベースのタイピングシューティングゲームを制作するコーディングテストでは、Fable 5の完成度が上回った。Solは独創的なアイデアを示したものの、グラフィックスや視覚効果は比較的シンプルだった。
これに対しFable 5は、音楽や効果音、アニメーション、1分当たりのタイプ数表示、パワーアップ要素などを実装し、より完成度の高い成果物を示したという。
Decryptは、コーディングのベンチマークや費用対効果を重視するならGPT-5.6のSolが有力だが、一般的な対話、文章生成、創造的な作業ではFable 5も十分な競争力を維持していると評価した。そのうえで、性能差が大きくない中では、Fable 5が従量課金に戻る一方、GPT-5.6のSol、Terra、LunaはChatGPTの有料プランに含まれる点を踏まえると、最終的な選定は性能そのものより価格と提供条件に左右される可能性が高いと分析している。