Strategy会長のマイケル・セイラー氏が、ビットコイン上の任意データ書き込みを制限する提案「BIP-110」への反対を明確にした。オーディナルなど、決済用途以外のデータをどこまで許容するかを巡り、ビットコイン開発コミュニティ内の議論が広がっている。
Cointelegraphが19日(現地時間)に報じたところによると、セイラー氏はSNSへの投稿で「BIP-110が悪いアイデアである110の理由」を示した。
争点は、ビットコインネットワーク上にオーディナルのようなNFTに類するデータや任意データを書き込む行為を、どこまで制限すべきかにある。BIP-110は2025年12月に提案されたもので、ビットコインをP2P電子マネーとしての本来用途に沿って維持し、ネットワークを圧迫する非通貨データの書き込みを抑える狙いがある。
セイラー氏は、多くのビットコイン開発者がBIP-110を支持する理由には理解を示した。検証容易性の維持、ノード運営コストや望ましくないコンテンツ負担の軽減、低コストな決済手段の保全、健全な通貨としてのビットコインの役割維持といった問題意識は重要だと評価した。一方で、「目標には共感するが、解決策には同意しない」と述べた。
その上で、代替的な考え方として「中立的なルール」「強固なコンセンサス」「オープンな市場」「許可不要のイノベーション」を挙げた。ネットワーク層で特定の取引を選別するやり方は、ビットコインの運用原則にそぐわないとの立場だ。
今回の論点は、2015年から2017年にかけて続いた「ブロックサイズ戦争」以降、ビットコイン開発コミュニティで最も注目を集めるプロトコル論争の一つとみられている。当時は、拡張性向上のためにブロックサイズ上限を引き上げるべきか、それに伴うチェーン分離のリスクを受け入れるべきかを巡り、エコシステム全体で激しい対立が起きた。
BIP-110は匿名開発者のダトン・オム氏が提案し、Ocean Protocol創業者のルーク・ダッシュジュニア氏が支持している。一方、反対側にはBlockstreamのCEO、アダム・バック氏がいる。バック氏は、ビットコインの分散性とは他者に自らの価値観を押し付けないことだとした上で、この手法は検閲耐性や許可不要の通貨というビットコインのサイファーパンク精神に反すると主張した。
これに対し、ルーク・ダッシュジュニア氏ら支持派は、オーディナルによるブロックチェーン肥大化を「ネットワークへの深刻な脅威」と位置付け、早急な対応が必要だとしている。またBIP-110について、懸念されるようなチェーン分離は招かず、1年間の期限を設けた時限的な制限措置であり、長期的に手数料を支払う取引まで無効にする仕組みではないと説明している。
もっとも、有効化へのハードルは高い。BIP-110は、ビットコインのブロック検証ノードの55%以上が1ブロック期間を通じて支持した場合に適用される仕組みだ。直前の対象期間であるブロック95万5584から95万7599までの475期間目では、支持率は1%にとどまった。BIP-110を実行しているビットコインノードの比率は2%を超えているものの、有効化基準にはなお大きく届いていない。
一方で、オーディナルの活動自体は足元で大きく減速している。直近1カ月では、ビットコインブロックチェーンに新たに刻まれたオーディナルの1日当たり件数は1万件を下回った。2023年8月のピーク時には40万件を超えており、そこから大幅に落ち込んでいる。ネットワーク混雑の直接要因が弱まる中でも、プロトコルレベルの制限が必要かどうかを巡る議論は続いている。
このため、BIP-110を巡る論争は単なるスパム抑制策にとどまらず、ビットコインでどの取引を許容し、どこまでをネットワークの中立性とみなすのかという根本論点へ発展する可能性がある。
セイラー氏は投稿で、「私が尊敬する多くのビットコイン支持者はBIP-110を支持している。ビットコインを守りたいという彼らの思いは理解し、共有している。しかし、提案された治療法は症状そのものより危険だと考える。ビットコインに中立性の守護者が必要な理由を110挙げる」と述べた。