世界のAI市場で、学習済み重みを公開するオープンウェイト型LLMの存在感が急速に高まっている。DeepSeekやZ.ai、Moonshot AIなど中国勢に続き、米国でも同様の戦略を採る企業が現れ、OpenAIやAnthropicがけん引してきた閉鎖型モデル中心の競争構図に揺さぶりをかけている。
その象徴が、Moonshot AIが公開した大規模言語モデル「Kimi K3」だ。米フロンティアモデルに匹敵する性能をうたい、主要ベンチマークではAnthropicの「Opus 4.8」を上回ったとされる。コーディング性能の評価で首位に立ったことを受け、デービッド・サックス氏は米国のAI競争力低下に警鐘を鳴らした。
こうした流れは米国にも広がっている。OpenAI出身のミラ・ムラティ氏が率いるThinking Machines Labは、初の自社モデル「Inkling」をオープンウェイトとして公開した。外部の開発者や企業がダウンロードし、直接改変できる仕様だ。
オープンウェイト型モデルへの関心の高まりは、株式市場にも波及した。Moonshot AIによるKimi K3発表後には、NVIDIAやMicronなど半導体関連株が売られる場面があった。TSMCとASMLが堅調な四半期決算を示したものの、下落基調を反転させるには至らなかった。
このほか、AIを巡っては主要各社の動きも相次いでいる。
OpenAIは、AIコーディング支援サービス「Codex」と連動するキーボード「Codex Micro」を発売し、ハードウェア市場に本格参入した。
Anthropicは、Blackstone、Hellman & Friedman、Goldman Sachsと共同で、企業向けAIの導入・構築を担う合弁会社「Ode」を設立した。
Googleは「AIモード」に一部の外部アプリを接続し、作業をそのまま継続できる機能を追加した。対象は米国ユーザーからで、提供開始時点の対応アプリはInstacart、Canva、YouTubeとなる。
あわせてGoogleは、AIベースのリサーチツール「NotebookLM」のブランド名を「Gemini Notebook」に変更し、データ分析向けのコード実行機能を追加した。動画制作ツール「Google Vids」には、ユーザーの顔や声を反映するパーソナルAIアバター機能も導入した。
親会社Alphabetの株価は、主力AIモデル「Gemini 3.5 Pro」の投入遅延を巡る報道を受けて下落した。一方、Googleは「Gemini Enterprise」のフルスタック構成と他社モデルとの互換性を武器に、韓国市場の開拓を加速させる構えだ。
Appleは、AIプラットフォーム「Apple Intelligence」にAlibabaの「Qwen AI」を連携する形で、中国での提供に向けた承認を得た。
NVIDIAは、ロボットなど現実世界で稼働する「フィジカルAI」向けの小型オープンソースモデルを公開した。「Cosmos 3 Edge」は40億パラメータ規模で、データセンターではなく顧客の自前コンピュータ上で動作させられるという。
Alibaba Group Holdingの半導体設計子会社T-Headは、自社ソフトウェアスタックをオープンソースとして公開する。NVIDIAのCUDAエコシステムが持つ支配力に対抗する狙いがある。
Intelは、Google Cloudの「Gemini Enterprise」を全社導入し、半導体設計や社内業務の自動化を進める。企業運営、エンジニアリング、サプライチェーン、マーケティングの業務フローを前倒しし、チップ設計サイクルの短縮も図る計画だ。
Cadence Design Systemsは、電気エンジニアによるプリント基板(PCB)の設計・試験を支援するエージェント型AIシステム「OrA Stack」を公開した。
SpaceXは、AIモデルを動かすためのデータセンター容量の提供を巡り、米国防総省と協議している。ここ数カ月ではAnthropicやGoogleと同様の契約を結ぶなど、クラウドコンピューティング事業の拡大を急いでいるという。
Anthropicは、Metaのコンピューティングリソースを借り受ける案について、初期段階の協議を進めている。
AIサービス・ソリューション企業のBespin Globalは、AIA生命の次世代顧客相談改革に向けたスマートAIメッセンジャープロジェクトで、中核機能となる「AICSR(AI CSR Assistant)」を構築した。
Oracleは、企業向け統合業務システム「Fusion Applications」でAIエージェント型アプリを開発・運用できるよう、自社のAI開発ツール「AI Agent Studio」にAIネイティブの新たなビルダー環境を追加した。
中国の習近平国家主席は、発展途上国に対してAI分野での協力拡大を提案し、AIの安全保障上の問題を過度に拡大解釈すべきではないと訴えた。
政府は、国民全員に無料・無制限でAIサービスを提供する「みんなのAI」を年内に投入する方針だ。海外製AIへの依存を減らす必要があるとの立場を示している。一方、民間の無料AIサービスがすでに広く普及する中で、公的GPUまで投じる以上、「みんなのAI」ならではの差別化された役割が必要だとの指摘も出ている。