米マサチューセッツ工科大学(MIT)と独ミュンヘン工科大学の研究チームは、全固体電池の短絡を招く主因の一つが固体電解質内部の「粒界」にある可能性を示した。粒界周辺の電流分布を解析し、加工条件を調整した結果、デンドライトの発生を抑えながら、基準試料比で電流密度を300%超高めたという。7日、EV専門メディアInsideEVsが報じた。
全固体電池は、液体電解質の代わりに固体電解質を用いる次世代電池として期待されている。電気自動車(EV)の航続距離の延伸や充電時間の短縮、火災リスクの低減が見込める一方、量産車への採用はなお限定的だ。
商用化の壁の一つが、電池内部で成長する微細なリチウム金属突起「デンドライト」だ。デンドライトは内部損傷を引き起こし、最終的には短絡につながるおそれがある。
研究チームは、このデンドライト形成の背景にある要因として、固体電解質を構成する微細結晶の境界面である粒界に焦点を当てた。固体電解質は多数の微粒子が組み合わさってできており、粒界で電流や電位の偏りが生じると、リチウムイオンの移動が妨げられ、電子が局所的に集中しやすくなる。この偏りがデンドライトの成長を促すとしている。
MITの材料科学教授ハリー・タラー氏はブログ投稿で、「粒界は天気のようなものだ。誰もが話題にするが、誰も手を付けない」と述べた。今回の研究は、見過ごされがちだった粒界の問題を正面から扱ったものだ。
研究チームは、リチウム・ランタン・ジルコネート系の固体電解質を対象に、AIと分析手法を組み合わせて粒界領域の電流の流れを追跡した。そのうえで電解質の加工手法を調整し、損傷を抑えつつ、デンドライト形成を伴わずにリチウムイオンがより円滑に移動できる状態を実現した。エネルギー損失の低減にもつながったという。
実験では、電流密度が基準試料に比べて300%以上向上した。研究チームは、この結果について、従来の全固体電池設計よりも充放電速度を高め、電池寿命の延長につながる可能性を示したとしている。
もっとも、今回の成果は実験室段階にとどまる。完成車メーカーや電池メーカーは、EVの大量生産に適した全固体電池の実現に向け、欠陥を抑える独自技術の開発を進めている。
全固体電池の普及に向けた課題は、デンドライトだけではない。コスト低減に加え、量産工程で欠陥の発生を抑えることも引き続き大きなテーマとなっている。
今回の研究は、全固体電池の商用化を阻むボトルネックが、材料そのものだけでなく、微細構造や製造条件にもある可能性を示した。デンドライト抑制に向けた新たな設計・工程管理の方向性を示す事例として、今後の展開が注目される。