写真=BMW

BMWは2028年に、燃料電池SUV「iX5 Hydrogen」を発売する方針だ。次期X5では、ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド(PHEV)、バッテリー電気自動車(EV)、水素燃料電池車を含む5種類のパワートレインを展開する。

電気自動車専門メディアのInsideEVsが7日(現地時間)に、BMWの方針として報じた。BMWは第5世代X5の公開に合わせてパワートレイン戦略を示したが、水素モデルをどの国で販売するかは明らかにしていない。

今回の発表は、水素車市場がなお限定的な中で打ち出された。EVでは急速充電網の拡充やサプライチェーンの成熟が進む一方、水素車は水素ステーションの不足やコストの高さが普及の重荷になっている。

米エネルギー省によると、米国の一般向け水素充てん所47カ所はすべてカリフォルニア州に集中している。昨年時点では、世界の水素充てん所の80%超も中国、日本、フランス、ドイツ、韓国の5カ国に集まっていた。

こうした環境下でも、BMWは水素を自動車向けの技術にとどまらず、エネルギー貯蔵インフラを支える選択肢の1つと位置付けている。BMWグループで車両ラインを統括するフィリップ・コーン氏はX5の公開イベントで、水素経済が現実味を帯びれば、再生可能エネルギーの拡大と並行して普及が進む可能性が高いと述べたうえで、「水素は膨大な量のエネルギーを貯蔵できる」と語った。

背景にあるのは、再生可能エネルギーの拡大に伴う電力貯蔵需要の増加だ。風力や太陽光による発電量が増えるほど、余剰電力を蓄える手段の重要性が増す。BMWは、バッテリーに加えて水素もその有力な選択肢になり得るとみている。

構想としては、余剰電力を使って水を電気分解し、水素として貯蔵する。必要に応じて再び電力へ変換し、車両や貨物、産業用機器に活用する考えだ。こうした貯蔵需要が拡大すれば、車両向けの水素充てんインフラ整備も進む可能性があるとしている。

BMWはiX5 Hydrogenの仕様も公表した。車両には、7kgの水素を貯蔵するシリンダーを7本搭載する。

燃料電池は、貯蔵した水素と空気中の酸素を反応させて発電し、その電力でモーターを駆動する仕組みだ。燃料電池パワートレインはToyotaと共同開発した。

BMWによると、iX5 Hydrogenの航続距離はWLTP基準で最大750km、水素充てん時間は5分以内。水素で走る乗用車として初の四輪駆動モデルになるとしている。

一方で、課題は依然として経済性とインフラにある。水素燃料電池車は、EVと同様に短時間で充てんできる点を強みとするが、価格は公表していない。

EVがガソリン車やディーゼル車などの内燃機関搭載車との価格差を縮めつつあるのに対し、水素燃料電池車は依然として大幅に高価だ。充てん拠点が限られることも、本格普及に向けた大きな障壁となっている。

環境面を巡る課題も残る。米エネルギー省によると、米国で生産される水素の95%は現在も化石燃料由来だ。

太陽光や風力による電力で製造する「グリーン水素」の普及が進まなければ、水素車の環境優位性は高まりにくい。

エネルギー貯蔵手段としてみた場合、水素とバッテリーは競合というより補完関係にあるとの見方もある。バッテリーは電力網の変動を素早く吸収できる一方、水素は自己放電が極めて少なく、数カ月単位での貯蔵が可能だ。

ただし、電力を水素に変換し、再び電力に戻す際の往復効率は35~55%にとどまる。バッテリー貯蔵システムの80~90%を下回る水準だ。

こうした制約がある中でも、BMWは水素技術の開発を継続している。スパータンバーグ工場では10年以上にわたり、数百台の水素フォークリフトとトロリー列車を運用してきた。

他社も水素活用を進めている。Hyundai Motor Groupはジョージア工場で、燃料電池大型トラック「XCIENT」を短距離輸送に活用している。Toyotaの「Mirai」、Hondaの「CR-V e:FCEV」、Hyundai Motorの「Nexo」なども販売されているが、市場での成果は限定的だ。

InsideEVsによると、Miraiの昨年の米国販売は210台にとどまった。

BMWは、水素SUVでも走行感覚はバッテリーEVと大きく変わらないと強調する。iX5 Hydrogenは、バッテリーEVの兄弟モデルと同様に「Heart of Joy」コンピュータと、第6世代(Gen6)の高電圧バッテリーアーキテクチャを共有するという。

BMWの水素車戦略は、短期的な販売拡大よりも、長期的にエネルギー貯蔵エコシステムが実際に広がるかどうかに左右される。水素が電力網の貯蔵需要を追い風にインフラを拡大できるのか、それともコスト負担の重い実証段階にとどまるのか。2028年のiX5 Hydrogen投入後、市場で見極められることになりそうだ。

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