AIの普及に伴い、データセンターの水使用量が急増する可能性が高まっている。2030年には年間使用量が最大1兆2000億リットルに達するとの見方もあり、業界では冷却方式の見直しが重要課題として浮上している。
米ITメディアのTechRadarが7日(現地時間)、国際エネルギー機関(IEA)のデータを基に報じたところによると、データセンター業界の年間水使用量は現在、約5600億リットル規模に達している。最近の報告書では、これが2030年までに最大1兆2000億リットルへ拡大する可能性があると予測した。
背景にあるのは冷却需要の増大だ。データセンターではサーバーや半導体が発する熱を抑えるため大量の水を使っており、現在も多くの施設が開放型の蒸発冷却に依存している。この方式は、温まった水を冷却パッドに噴霧し、蒸発時の気化熱で温度を下げる仕組みで、蒸発した分の水を継続的に補給しなければならない。
有力な代替策として挙がるのが、閉鎖循環型の液体冷却だ。同じ水を繰り返し循環させ、蒸発させずに熱交換器で熱を取り除く方式で、通常運用では水使用量の抑制につながるとされる。
冷却効率の改善も、水使用量の削減に直結する。現在は冷却の非効率さから、総電力使用量の最大3分の1を熱管理に充てるデータセンターもある。施設全体をファンで冷やしながら、個別機器も別途冷却する構成では、電力と水の負担が同時に膨らみやすい。このため、ノード単位の直接冷却やチップ直接冷却といった方式への関心が高まっている。
チップ直接冷却は、GPUなど発熱の大きい部品に冷却プレートを取り付け、その内部に冷却液を流して熱を直接吸収する仕組みだ。ノード単位の直接冷却を含む液体冷却技術では、サーバーで発生する熱の最大98%を除去できるとされる。事業者側は、室内全体の熱気を冷やす代わりにプロセッサレベルで熱を処理することで、エネルギー需要と地域の水資源への負荷を抑えられるとしている。
AIインフラの拡大は、こうした流れをさらに後押ししている。生成AIで使われるGPUは、CPUに比べて5〜10倍のエネルギーを消費する可能性がある。加えて、3Dシリコン積層など高密度実装の拡大により、限られた空間に部品を集積する設計が増え、冷却負荷は一段と高まっている。このため、高温水を使う閉鎖循環型冷却は、ラック密度の高い環境でも性能を維持しつつ蒸発冷却を代替する節水策として注目されている。DreamWorks Animationは高性能計算に同方式を導入した後、性能が20%向上し、冷却需要も減少したとしている。
廃熱の再利用も重要なテーマになっている。データセンターで消費される電力の多くは熱に変わるが、これまでは除去して捨てる副産物として扱われることが多かった。一方で、この熱は住宅地や商業ビル、地域暖房に供給できる資源にもなり得る。
実際、アイルランドやスカンディナビアの一部プロジェクトでは、データセンターの廃熱を住宅や事業所の暖房に再利用している。廃熱を地域社会に供給する仕組みは、化石燃料への依存低減やエネルギーコストの削減にもつながる可能性がある。
立地戦略の見直しも欠かせない。地域の淡水供給に大きな負荷がかかる場所を避ける必要があるためだ。IT分野の専門家の45%は、現在のデータセンター設計では持続可能性の目標を十分に支えられていないとみている。
データセンターの節水は、単一技術の導入だけで解決できる問題ではない。開放型の蒸発冷却への依存を減らし、閉鎖循環型の冷却やチップ単位の冷却を広げるとともに、廃熱を外部資源として活用し、立地そのものも再設計していく必要がある。AIインフラの拡大が続くなか、冷却方式と水使用構造の転換は、データセンター産業の持続可能性を測る重要な評価軸になりそうだ。