Binanceのリチャード・テンCEOは、暗号資産について、もはや単なる投資対象ではなく、金融システムを支える基盤インフラとして捉えるべきだとの考えを示した。24時間取引や即時決済といった特性が、既存の金融サービスの設計そのものを変えつつあると指摘している。
ブロックチェーンメディア「Cryptopolitan」が7日(現地時間)に報じたところによると、テン氏は最近出演したポッドキャストで、暗号資産が市場の常時稼働と決済の高速化を実現し、金融サービスの構造を変えていると語った。
テン氏は、暗号資産の競争力として取引スピードと24時間動く市場を挙げた。伝統的な金融市場では、株式や債券の取引は限られた時間内で処理されるため、重要なニュースが引け後に出た場合でも、投資家が直ちにヘッジやポジション調整を行いにくいと説明した。
また、多くの証券市場では依然として約定から2営業日後に決済するT+2が主流で、資金がその間、カウンターパーティーリスクや市場リスクにさらされる点も課題だと指摘した。
これに対し、暗号資産市場は24時間稼働するケースが多く、決済スピードも大幅に速いという。オンチェーン環境の一部では、複数の仲介機関を介さず、取引がほぼ即時に完了し得るとの見方を示した。
テン氏は、暗号資産はすでにアトミック決済へ移行しており、技術的には即時決済が可能になっていると述べた。
こうした見方は、Binanceの事業戦略とも重なる。テン氏は、利用者が現物取引にとどまらず、デジタル資産市場に参加するためのさまざまなツールやサービスを単一のプラットフォーム上で求めていると説明した。
そのうえでBinanceは、需要に応じてサービス領域を広げ、暗号資産の枠を超えた幅広い金融機能を備える、いわゆる「金融スーパーアプリ」の構築を目指していると明らかにした。ただし、提供できる製品や機能は各国の規制によって異なり、すべての地域で同一のサービスを展開するわけではないとした。
テン氏は、現実資産(RWA)のトークン化も同じ流れの延長線上にあるとみている。国債やクレジット、商品などの伝統的な金融商品が、ブロックチェーン上でトークンとして取引される事例が増えていることを根拠に挙げた。
RWA.xyzの集計によると、ステーブルコインを除くオンチェーン上の現実資産(RWA)残高はこの1年でほぼ3倍に増え、326億ドルに達した。
機関投資家がトークン化に関心を示す理由も、暗号資産全般の利点と共通しているとテン氏は説明する。24時間取引、運用の効率化、迅速な決済が、機関投資家の需要を引き寄せているという。
テン氏は「ステーブルコインが急成長し、現実資産のトークン化が広がるなか、SWIFTのような既存ネットワークもブロックチェーン対応を検討せざるを得なくなる」との認識を示した。
さらに、こうした変化は金融機関の設計そのものを変える可能性があるとも述べた。現在のツールやアーキテクチャ、インフラを前提に将来の金融サービスを再設計すれば、今後登場する銀行や資産運用会社は、従来と同じモデルにはならないとの見方だ。
ブロックチェーン基盤のシステム普及が進むほど、金融サービスの基本構造も変化していく可能性があるという。
伝統的金融の受け止め方にも変化が出ている。テン氏はBlackRockのラリー・フィンク氏やJPモルガンのジェイミー・ダイモン氏に言及し、市場参加者がブロックチェーン基盤への理解を深めるにつれ、トークン化などの活用事例にも徐々に前向きになっていると語った。
その結果、暗号資産市場の競争軸は、値動きそのものよりも、決済構造や金融インフラの転換スピードへと移りつつあるとした。