ドイツ政府は、暗号資産の長期保有に適用してきた非課税措置を廃止する方針だ。写真=Shutterstock

ドイツ政府は、暗号資産を1年以上保有した後に売却した場合の非課税措置を廃止する方針だ。実現すれば、暗号資産の売却益は保有期間にかかわらず課税対象となる。政府は2027年から、少なくとも年10億ユーロの増収を見込む。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが7日(現地時間)に報じた。現地報道によると、この方針はドイツ財務省(BMF)がまとめた2027年連邦予算案と2030年までの財政計画に盛り込まれた。フリードリヒ・メルツ首相の内閣はすでに草案を承認しており、公表された予算案の抜粋には、「金融・租税犯罪への対応と暗号資産課税の導入」により、2027年に10億ユーロを追加で国庫に繰り入れる考えが明記された。

焦点となるのは、ビットコインやイーサリアムなど暗号資産の長期保有に対する優遇税制の見直しだ。これまでドイツでは、暗号資産を取得してから12カ月経過後に売却した場合、売却益は非課税とされてきた。

政府案どおり制度が改正されれば、個人が保有する暗号資産の売却益はキャピタルゲインとして扱われ、保有期間に関係なく課税対象となる。

今回の見直しは、政府が進める財政再建策の一環でもある。財務省は、政府支出や各種税制優遇の見直しに加え、金融・租税犯罪の取り締まり強化を柱に据えた。

政府は、これらの施策によって2027年予算で計62億ユーロの財源を確保できると見込む。このうち30億ユーロは、今回のような非課税・減免措置の見直しで捻出する想定だ。

ほかの増税策もあわせて進める。使い捨てプラスチックへの新税で10億ユーロ、たばこ税と酒税の引き上げでそれぞれ8億ユーロと4億ユーロの増収を見込む。暗号資産課税の見直しも、こうした税収拡大策の一部に位置付けられている。

市場や業界が注目するのは、欧州連合(EU)の暗号資産規制枠組み「MiCA」の本格運用と時期が重なる点だ。MiCAの移行期間終了を受け、欧州全域で規制下にあるデジタル資産へのアクセス拡大に期待が高まる一方、多くのプラットフォームは依然としてライセンスを取得できていないとされる。ドイツは、MiCA認可の発給件数が最も多い国の一つとして言及されている。

ドイツはすでに5月、暗号資産サービス提供事業者に対し、利用者データの収集と税務当局への提出を義務付ける新たな要件も導入した。取引監視と徴税体制の強化が並行して進んでいる格好だ。

長期保有に対する非課税措置の廃止まで実現すれば、ドイツの暗号資産投資家の税負担は一段と重くなる可能性がある。

もっとも、制度改正にはなお立法手続きが残る。改正案はまだ確定しておらず、議会の承認が必要だ。第1回審議は9月上旬、第2回審議は12月中旬に開かれる可能性がある。

政界内でも意見は割れている。ラルス・クリングバイル財務相が所属する社会民主党は暗号資産への課税強化に前向きな一方、メルツ首相が率いる中道右派のキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟は、全般的に制度変更に反対してきた。実際、同趣旨の法案は過去に連邦議会で一度頓挫した経緯がある。

政府文書が「金融・租税犯罪への対応と暗号資産課税の導入」を増収策として明記した点も論点になっている。業界では、今回初めて具体的な税収目標が示されたことに注目が集まっており、関連業界で最近取り沙汰されていた推計値とおおむね一致するとの見方も出ている。

今後の焦点は、ドイツ議会が長期保有の非課税廃止を実際に可決するかどうか、そしてMiCA体制の下で市場アクセスの拡大と課税強化をどう両立させるかの2点だ。規制の明確化を進める一方で税負担も引き上げる方向となれば、ドイツの暗号資産市場における投資行動やサービス事業者の対応に小さくない影響を及ぼす可能性がある。

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