米ニューハンプシャー州で、1億ドル(約150億円)規模のビットコイン担保債の発行案が審議段階に入った。州議会が公聴会で議論する予定で、実際の発行にはケリー・アイオット知事と5人で構成される州行政委員会の承認が必要となる。
Cointelegraphが7日(現地時間)に報じたところによると、同州国務長官室は、州議会がこの発行案を公聴会で取り上げる予定だと明らかにした。
この案件は、州の企業金融当局が知事と州行政委員会の議題として提出したことで具体化した。同当局は水曜日の会合で、1億ドル規模のビットコイン担保債の発行案を扱う予定だ。
ただ、発行にはアイオット知事と州行政委員会の正式承認が必要となる。
この債券は、従来の地方債とは異なる仕組みを採る。2025年11月にはすでに企業金融当局の承認を得ており、現在は最終承認を残す段階にある。
アイオット知事は当時、この仕組みについて、州政府の資金や納税者資金をリスクにさらすことなくニューハンプシャー州に投資機会をもたらし、同州をデジタル金融分野の先進州として位置付ける革新的な手法だと説明していた。
今回の動きは、同州が進めてきたデジタル資産に前向きな政策の延長線上にある。ニューハンプシャー州は2025年5月、米国で初めて戦略的ビットコイン準備金法案を可決した州でもある。
同法では、時価総額が5000億ドル(約7兆5000億円)を超えるデジタル資産について、公的資金の最大5%を投資できると定めた。現行の条件では、対象となるのはビットコインのみだ。
一方、市場関係者や学界からは、実験的な意義を評価する声とともにリスクを指摘する見方も出ている。マーケット大学の金融学名誉准教授デイビッド・クラウスは4月の分析で、この債券について、構造化金融にデジタル資産を組み合わせる概念実証になり得る一方、汎用的な公的金融手段としては適さないと評価した。
クラウスは、民間の借り手であるCleanSparkが担保資金を提供するため、州政府や納税者に対する償還請求権はないとの見方も示した。
その上で、こうした債券の最大の意味は、価格変動の大きいデジタル資産に合わせて伝統的な金融システムを調整する難しさを浮き彫りにする点にあると指摘した。一方で、この仕組みが公的部門の債券市場にそのまま広がる可能性は低いとも警告している。
信用面も重荷となる。ムーディーズは3月、このビットコイン債にBa2の格付けを付与した。Ba2は、相応の信用リスクを伴う投機的等級に当たる。
仮に発行が実現しても、一般的な地方債と同等の安定性を期待しにくいことを示すシグナルと受け止められそうだ。
ニューハンプシャー州が実際にビットコイン担保債を発行すれば、米国の州政府としては初期事例の一つとなる。類似の構想はエルサルバドルでも進められたが、2022年に提案された10億ドル(約1500億円)規模のビットコイン担保「Volcano Bonds」は、暗号資産市場の低迷を受けて実現しなかった。
ニューハンプシャー州の判断は、米国の州政府がデジタル資産を公的金融にどこまで組み込めるかを測る試金石となる可能性がある。今後は、最終承認の行方と信用リスクの見極め、さらに他州への波及が焦点となる。