Teslaのヒューマノイドロボット「Optimus」の開発に関わったエンジニアが、欧州で新たなヒューマノイドスタートアップを立ち上げた。TeslaやFigure、中国勢が先行する市場に参入し、製造業や物流向けに汎用AIを搭載したヒューマノイドを投入する。Electrekが現地時間7日に報じた。
同氏はTesla出身のレミ・カデン氏。フランス・パリを拠点とするスタートアップUMAの共同創業者兼CEOとして、次世代ヒューマノイド「Northstar」の開発計画を明らかにした。UMAは約50社の潜在顧客と導入に向けた協議を進めており、年内にも産業現場向けのパイロットプログラムを始める方針だ。
主なターゲット市場は製造工場と物流倉庫。将来的には家庭向けヒューマノイドへの展開も視野に入れる。事業戦略としては、米国や中国より先に欧州市場を優先的に開拓する考えだ。
カデン氏は、欧州では人件費の高さに加え、労働力不足や高齢化といった構造的な課題が重なっており、ヒューマノイド需要は大きく伸びるとみている。「欧州は労働コストが非常に高い。人口構造を踏まえると、自動化ニーズは大きく高まる」と説明した。
創業メンバーには、ロボット工学やAI分野の専門人材がそろう。共同創業者には、Hugging Face出身のエンジニアであるシモン・アリベール氏と、ロボットデザイナーのロブ・ナイト氏が参加した。出資者にはGreycroft、Relentless、Unity Growthが名を連ねる。個人投資家として、Metaの主任AI科学者ヤン・ルカン氏、DatadogのCEOであるオリビエ・ポメル氏、Hugging Face共同創業者のトマス・ウルフ氏も加わった。
UMAにとって大きな強みとなるのが、カデン氏の経歴だ。同氏は約3年間にわたりTeslaのAutopilot組織で運転支援システムやOptimusのAI開発に従事した。その後はHugging Faceに移り、オープンソースのロボティクスライブラリ「LeRobot」の開発を主導。公開から1年で、GitHubで1万2000超のスターを集める代表的なロボティクス系オープンソースプロジェクトに育てた。
一方で、市場競争は激しさを増している。ヒューマノイド市場では、TeslaやFigureなどの米国勢に加え、Unitreeをはじめとする中国勢も存在感を強めている。Teslaは今夏、米フリーモント工場で第3世代Optimusの少量生産を始める計画だが、外部顧客向けの商用導入実績はまだ公表していない。イーロン・マスクCEOも年初、Optimusが社内で一部作業を担っている一方、十分な生産性を実現した段階にはないと認めていた。
実運用ではFigureが先行する。BMWの米スパータンバーグ工場では、Figureのヒューマノイドが実際の生産ライン作業に投入されており、商用化で一歩先を進む。現代自動車とBoston Dynamicsも、産業用ヒューマノイドの開発を拡大している。
UMAはまだ完成品を出荷していないものの、導入を検討する企業との協議を進めながら市場参入の準備を急ぐ。当面の焦点は、年内に予定するパイロットプロジェクトを有償契約につなげられるかどうかにある。
公開されている画像を見る限り、UMAのハードウェアの完成度は競合に比べて見劣りするとの見方もある。ただ、業界ではヒューマノイド競争の中核は機械構造そのものではなく、ソフトウェアとAIにあるとの認識が強い。ロボットが現実空間を理解し、人に近い形で作業をこなせるかが、商用化の成否を左右するためだ。
UMAはTeslaとHugging Faceで培ったAI技術を軸に差別化を図る。年内のパイロットを実際の商用契約へ結び付けられれば、欧州発ヒューマノイド企業の成長事例として注目を集めそうだ。