Samsung Heavy Industriesは、浮体式データセンターの商用化を2028年4〜6月期に目指す。AIの普及でデータセンター需要が拡大するなか、海上に設置する新たなインフラとして事業化を進める考えだ。
7日(現地時間)の造船・証券業界によると、同社は実際の設置に先立ち、受注確保に向けた取り組みも進めている。
構想の背景には、陸上データセンターを巡る電力・水使用の増大、地域社会の反発、用地不足の深刻化がある。AIの普及に伴って計算需要が急増しており、クラウド業界では新たな立地の確保が課題となっている。
同社は、バージ型の専用プラットフォームを開発し、サーバーや電力関連設備、船上の電源設備を一体で搭載する案を検討している。初期段階では既存の送電網に接続した陸上電力を主に活用しつつ、施設を水面上に置くことで冷却負荷の低減を図る。
海上は陸上に比べて温度変動が小さく、冷却効率の面で優位性があるとみている。
電源構成には拡張の余地もある。これまでに示した構想では、液化天然ガス(LNG)をベースとする固体酸化物形燃料電池の採用を盛り込み、太陽光や風力など再生可能エネルギーの活用も選択肢として挙げている。
同社は、浮体式データセンターが陸上施設に比べ、建設スピードの面でも優位になり得るとみる。長期化しがちな許認可手続きの負担を抑えられるほか、造船業で培った生産工程や設備を活用できるためだ。
チェ・ソンアン代表は、浮体式データセンターについて「造船・海洋産業にとって重大な新たな機会だ」と述べた。
一方で、技術面の課題は少なくない。TechRadarは、海水の流入対策や湿度管理、塩分による腐食、潮流・潮汐の変化に対応した安定性の確保を主な論点として挙げている。
商用化の目標時期は示されたものの、実際の設置・運用段階では、こうした変数に対する十分な検証が必要になりそうだ。
浮体式データセンターは、Samsung Heavy Industriesだけが取り組む分野ではない。ピーター・ティール氏が支援したスタートアップのPanthalassaは、波力エネルギーと海水冷却を活用する浮体式データセンターを開発している。
日本では2026年3月、Hitachiが海運会社のMitsui O.S.K. Linesと、関連施設の開発・運営に向けた覚書を締結した。
中国でも、海上・水中データセンターの実証が続いている。中国当局とHiCloud Technologyは、2億2600万ドル規模の海底データセンターを共同で推進したと公表した。
この施設は24メガワット(MW)規模で、海水を利用したパッシブ冷却方式を採用し、AI関連作業や5Gサービス、大規模なデータアノテーション業務を処理する設計とされる。
Microsoftも過去に、スコットランドおよびカリフォルニア近海で「Project Natick」を通じて水中データセンターのカプセルを試験したが、商用開発は中断している。
データセンターの立地戦略が陸上中心から多様化するなか、Samsung Heavy Industriesの構想が実際の受注や設置に結び付けば、造船業の製造基盤をデータインフラ分野へ広げる事例となる可能性がある。
浮体式データセンターが、AI時代の電力・冷却問題に対する現実的な代替策となるかが、今後の焦点となる。