Vanguardが、暗号資産戦略を統括する専任責任者の公募に初めて乗り出した。募集職種は「デジタル資産部門長」で、富裕層向け戦略の立案・実行に加え、規制当局や業界団体との協議も担う。暗号資産に慎重だった同社の姿勢に変化の兆候が出ているとして、市場の関心を集めている。
8日(現地時間)、ブロックチェーンメディアのCoinpostによると、Vanguardはこのほど同ポストの求人を公開した。採用後は、個人の富裕層向け暗号資産戦略の策定と実行を主導する役割を担う。
募集要項を見ると、単なる商品運用の担当者ではなく、暗号資産事業の方向性を横断的に統括するポストであることがうかがえる。富裕層向けデジタル資産戦略の統括に加え、規制当局や業界関係者との対話、業界標準づくりへの関与も業務に含まれる。社内外で暗号資産分野の高度な専門性を発揮できる人材を求めている。
注目されるのは、これまでのVanguardの立場との違いだ。同社は従来、ビットコインを長期投資家に適さない未成熟な資産と位置付け、暗号資産に批判的な姿勢を維持してきた。サリム・ラムジCEOも、BlackRockやFidelityのように自社の暗号資産現物ETFを投入しない方針を示していた。
もっとも、足元では変化を示す動きも出ている。Vanguardは昨年12月から、自社の取引プラットフォームで、ビットコインやソラナ、XRP、イーサリアムに関連するETFの売買を認めた。暗号資産の現物商品には距離を置きつつも、顧客の間接的な投資手段は広げた格好だ。
またVanguardは、世界最大のビットコイン保有企業として知られるStrategyの最大株主になったとも伝えられている。暗号資産そのものには慎重姿勢を保ちながらも、資本市場を通じた関連エクスポージャーの拡大までは避けていないことを示す動きといえる。
今回の公募が特に注目されるのは、Vanguard内部で暗号資産の戦略立案から実行までを横断的に担う専任ポストが、事実上初めて明確になったためだ。新設ポストは単一商品の運用にとどまらず、顧客戦略、規制対応、業界連携、業界標準づくりへの関与を一体で担う。暗号資産を独立した戦略領域として扱い始めたシグナルと受け止める向きもある。
Vanguardの規模も小さくない。2025年末時点の運用資産は12兆ドルで、BlackRockに次ぐ世界2位とされる。大手資産運用会社が暗号資産の専任責任者を公募すること自体、デジタル資産を巡る制度金融の関心が一段と広がっていることを示している。
今後の焦点は、このポストを通じてVanguardが事業領域をどこまで広げるかにある。現時点では、自社の現物ETFを投入する計画は確認されていない。ただ、富裕層戦略、規制当局との協議、業界標準づくりへの関与を前面に打ち出した以上、同社の暗号資産政策が従来の守勢から実務対応へと軸足を移すのかが注目される。