Samsung ElectronicsとSK hynixの間で、エンジニアの往復転職が目立ってきた。SK hynixからSamsung Electronicsへ移り、再びSK hynixに戻る動きや、その逆のケースも広がっている。業界では、両社が蓄積してきた工程ノウハウが人材移動を通じて交錯し、韓国半導体の技術的な独自性が薄れる可能性を懸念する声が出ている。
足元では、SK hynixが経験者採用を相次いで実施していることに加え、両社の報酬水準の差にも関心が集まり、人材移動の流れに変化が出ている。これまではSK hynixからSamsung Electronicsへ移る動きが一般的とされてきたが、HBMを武器にSK hynixの競争力が高まったことで、流れは双方向へと変わりつつある。
業界によると、SK hynixが実施した若手向けの経験者採用には、Samsung Electronics出身の博士人材が応募した例がある。これまで海外企業への転職を検討していたSamsung Electronicsの人材が、進路を変えてSK hynixを選ぶケースも出ているという。
こうした動きは一方向ではない。いったんSamsung Electronicsに移った後、再びSK hynixに戻る人材も少なくない。業界では、SK hynixの復帰応募者が採用規模を大きく上回り、各事業部が選別して受け入れているとの見方が出ている。優秀な人材を除き、採用に慎重な姿勢へ転じたとの話もある。両社を行き来しながら待遇改善を図る実利重視の転職が、エンジニアの間で定着しつつある格好だ。
一方で、Samsung Electronicsが投資拡大や待遇改善を通じて流出人材の呼び戻しを進め、SK hynixへ移った後にSamsung Electronicsへ戻るケースも業界で取り沙汰されている。
背景には、こうした往復転職を巡る法的制約が弱まったこともある。1月、ソウル中央地裁民事60部(裁判長=キム・ミギョン部長判事)は、SK hynixがSamsung Electronicsへ転職した元従業員A氏を相手取り申し立てた、同業転職を禁じる仮処分を却下した。SK hynixが抗告しなかったため、決定は確定している。
A氏は2013年にSK hynixへ入社し、2022年ごろに中核人材に選抜された。HBM設計部門でパート長を務めた後、2024年4月の退職時に2年間の競業制限に合意した。その後、KAISTの委嘱研究員とSamsung Electronicsの付属研究員を経て、2025年4月からはSamsung Electronicsの標準HBMグループでチップ統合設計を担当する役員として勤務している。
SK hynixは、A氏が持つHBMとDRAMの設計技術は国家中核技術に当たり、両社のHBM3およびHBM3Eにおける技術格差やシェア差を踏まえれば、2年間の競業制限は過度ではないと主張した。これに対し裁判所は、職業選択の自由を制約するには、労働者が受ける不利益に見合う補償が必要だと判断した。A氏には明示的な対価が支払われておらず、パート長への任命時期も退職に近かったことから、重要職位に長期間在職していたとは言いにくいとした。
さらに裁判所は、退職の経緯に重大な背信性があったとは言えず、退職から1年後の転職だけでSamsung Electronicsが技術格差を縮められると断定するのも難しいと述べた。韓国の大法院も、職業選択の自由と勤労の権利は基本権に属し、競業制限の合意は合理的な範囲でのみ有効だと判断している。
問題は、この過程で文書などの持ち出しがなくても、ノウハウが移転し得る点にある。半導体工程では、特許として公開される技術以上に、現場エンジニアが試行錯誤を通じて蓄積した営業秘密や暗黙知の比重が大きいとの指摘がある。半導体人材の頻繁な移動は、業界全体に共通する現象でもある。
韓国雇用情報院の報告書によると、エンジニアや研究開発人材は2〜3年の経験を積んだ後、それを足掛かりにより高い賃金を求めて転職するケースが多い。こうした移動が大手企業の間で繰り返されれば、工程最適化に関する暗黙知が人材移動を通じて共有され、両社の独自アーキテクチャが似通う可能性があるとの見方も出ている。
政府が技術流出対策の組織を大幅に拡充したことも、こうした危機感を裏付ける。知的財産庁は6月29日、「技術流出・強奪対応体制の拡大改編案」を発表し、30日から運用を始めた。営業秘密と国家中核技術の流出を専担する「技術流出特別司法警察課」を新設し、捜査人員を27人から61人へ増員した。組織も1課から4課体制へ拡大した。
裁判所が、補償を伴わない競業制限に一定の歯止めをかけた以上、両社が中核人材を引き留めるには、相応の補償制度を整える必要があるとの指摘もある。業界関係者は「転職そのものを止めるのは難しい」とした上で、「半導体人材の確保は、独自ノウハウを守るうえでも重要だ」と話している。