TSMC 写真=Shutterstock

TSMCは、台湾海峡の洋上風力プロジェクト「Hai Long」で発電する電力の全量を30年間にわたり購入する。AI半導体の需要拡大で電力消費の増加が見込まれる中、安定した電力調達と再生可能エネルギーの活用拡大を同時に進める狙いだ。

米Ars Technicaによると、TSMCはカナダの電力会社Northland Powerと、「Hai Long」洋上風力プロジェクトを対象とする電力購入契約(PPA)を締結した。

契約対象は、台湾中西部の西海岸沖にある3海域の洋上風力発電所で発電する電力の全量。発電規模は1ギガワット(GW)を超えるという。

「Hai Long」プロジェクトが完成すれば、100万世帯超に相当する電力を供給できる見通しだ。発電所は2025年に送電を開始しており、2027年の全面稼働を予定している。

今回の契約は、環境対応にとどまらず、増大する電力需要への備えという意味合いが強い。AI半導体の生産拡大に伴い、TSMCの電力消費は急増しているためだ。

国際エネルギー機関(IEA)によると、TSMCの電力使用量は2023年時点で台湾全体の消費電力の約10%に達した。Data Center Dynamicsが引用したS&P Globalの分析では、この比率が2030年には台湾全体の4分の1規模まで拡大する可能性があるとしている。

こうした中、台湾政府もエネルギー安全保障への対応を急いでいる。中東情勢の緊迫化を背景に供給網への懸念が高まり、輸入燃料への依存度が高い台湾の脆弱性が改めて浮き彫りになっているためだ。

特に今年3月には、イランのドローン攻撃で関連施設が損傷した後、カタールが天然ガス生産を停止し、台湾は通常の液化天然ガス(LNG)供給量の約3分の1を失ったと伝えられている。台湾は現在、電力の約半分を天然ガス火力に依存しており、燃料備蓄も通常2週間分にとどまる。

台湾政府は、オーストラリアや米国など代替調達先の活用によって短期的な電力不足の抑制を図っている。直近のエネルギーフォーラムでは、台湾経済部の次官が、少なくとも8月、長ければ9月まで通常運用が可能な水準の石油・ガスを確保したと明らかにした。

こうした状況を受け、台湾は再生可能エネルギーの拡大と原子力発電の再稼働を並行して検討し、エネルギー構成の見直しを進めている。ワシントンDCのGlobal Taiwan Instituteによると、台湾は電力、輸送、暖房を含むエネルギー需要全体の約97%を、輸入に頼る化石燃料で賄っている。

洋上風力の拡大もその一環だ。台湾政府は2035年までに、合計15GW規模の洋上風力設備を開発する計画を進めている。TSMCも、世界の事業拠点における再生可能エネルギーの使用比率を2030年に60%、2040年に100%へ引き上げる目標を掲げている。

TSMCはすでに大規模な再生可能エネルギーの確保を進めている。2020年にはデンマークのエネルギー会社Orstedと920メガワット(MW)規模の洋上風力を対象とするPPAを結び、2021年にはドイツのWPDと1GW超の陸上・洋上風力開発契約も締結した。

TSMCの電力調達戦略は、単独企業の取り組みにとどまらず、台湾の産業政策やエネルギー安全保障にも影響を及ぼす要素になりつつある。AIチップの増産が進む中、安定した電力供給網を構築できるかが、今後の台湾半導体産業の競争力を左右する。

キーワード

#TSMC #洋上風力 #再生可能エネルギー #電力購入契約 #PPA #AI #台湾
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.