スマートグラス市場で新製品の投入が相次ぐ一方、ユーザーが日常的に身に着け続けるだけの明確な理由は、なお見えにくい。米ITメディアのThe Vergeは4月30日(現地時間)、スマートグラスの課題は技術力そのものより、日常生活で使う必然性を示せていない点にあると報じた。
記事では、Ray-Ban MetaやEven Realities G2、Rokid、XREAL、RayNeo、Lucydなどを例に挙げ、足元の製品群はデザインや機能の差が小さいと指摘した。音楽再生、メッセージ確認、ナビゲーションといった基本機能は備えるものの、製品ごとの差別化につながる利用シーンは限られるという。複数の製品を1年間使った結果として、普及には「なぜこの機器を一日中身に着けるのか」を納得させる説明が欠かせないと結論付けた。
業界はスマートグラスをAIウェアラブルとして訴求しているが、実際の使い勝手は期待ほどではなかった。Meta AIは車種の識別に複数回失敗し、Rokid製品では権限設定やBluetooth接続で不具合が相次いだ。Even Realitiesの会話支援機能も、製品説明の最中に「AI」や「ウェアラブル技術」といった基本用語を表示するにとどまったという。
プライバシー面の懸念も大きい。目立たないデザインほど日常使いには向く半面、カメラを搭載したモデルでは周囲の警戒感が高まりやすい。記事では、花店の店員を意図せず撮影してしまった例を紹介したほか、クルーズ船や法廷ではすでにこうした機器の使用が禁じられていると伝えた。
視力補正や修理のしにくさも課題として残る。Metaは最近になって、幅広い度数に対応するモデルを投入した。Even Realitiesは最大±12まで対応可能としているが、遠近両用レンズが必要なユーザーにとっては選択肢がなお限られるという。フレーム内に電子部品を内蔵する構造上、一般的な眼鏡のように鼻パッドやネジを自分で交換しにくい点も問題視した。
実用面の制約も浮き彫りになった。リアルタイム翻訳や字幕表示は静かな環境でなければ十分に機能せず、ナビゲーションも有効な場面は限られる。旅行のように移動の多いシーンでは比較的使いやすいものの、一般ユーザーにとっては結局、オープンイヤー型イヤフォン付き眼鏡に近いとの評価を示した。
もっとも、将来性まで否定しているわけではない。現在のスマートグラスは過去の製品より低価格で、装着感や性能も改善しているという。満足度が高かった製品としては、ランニング時のトレーニングや記録など、用途が明確なOakley Meta Vanguardを挙げた。
今回の指摘は、スマートグラスを巡る競争が、単なる機能追加から「使う理由をどう示すか」へと移りつつあることを示している。AI機能を載せるだけでは不十分で、装着する時間や場所、目的が明確になって初めて製品としての価値が生まれると結論付けた。