米国で暗号資産を巡る連邦レベルの法整備が進まない限り、ウォール街が期待する資産のトークン化や機関投資家の本格参入は進みにくい――。著名投資家のケビン・オリアリー氏が6日、こうした見方を示した。
ブロックチェーンメディアのCoinDeskによると、オリアリー氏は米マイアミで開かれた「Consensus 2026」に登壇し、明確な規制の枠組みが整うまで、大手金融機関や機関投資家がブロックチェーン基盤の資産に本格的に資金を振り向けることは難しいと述べた。
同氏は、足元で語られているトークン化ブームについて「過熱気味だ」との認識を示した。大手機関の運用担当者の多くは、現在もデジタル資産の大半を主要な投資対象とはみなしていないという。
オリアリー氏は「トークン化は機関投資家のポートフォリオに簡単には組み込まれない」「ビットコインも大口投資家にとっては依然として中核資産ではない」と語った。
一方で、市場の転機になり得るのは米国での法制化の進展だと指摘した。デジタル資産の位置付けが米証券取引委員会(SEC)の規制体系の下で明確になり、グローバルなコンプライアンス体制とも整合すれば、市場は大きく動き始めるとの見方を示した。
同氏は「法案が実際に可決されなければならない。そうなれば、状況は一変する」と述べた。
この発言は、ウォール街で株式や債券、ファンドなどの伝統資産をブロックチェーン上のデジタルトークンとして扱う取り組みが広がる中で出たものだ。トークン化は24時間取引や決済時間の短縮を可能にし、金融インフラの効率化策として注目を集めてきた。
ただ、オリアリー氏は、技術的な可能性と実際の資金流入は別問題だと線を引く。機関投資家が意味のある規模で資金を振り向けるには、まず法的な確実性の確保が欠かせないとした。
規制整備が需要を押し上げた例として、同氏はステーブルコインを挙げた。最近の米国の立法動向を踏まえ、GENIUS Actの通過後、ステーブルコインの採用はほぼ直ちに広がったと評価した。
国境をまたぐ送金については、「3日を無駄にする代わりに、数分で、しかもはるかに低いコストで、コンプライアンスと透明性を確保した取引が可能になった」と語った。
暗号資産市場の内部でも、機関投資家の関心はごく一部に集中しているとの認識を示した。同氏は「市場全体の価値の97%は、事実上ビットコインとイーサリアムに集中している」と述べた。
その一方で、多くの小型トークンは急速に縮小したと分析した。市場は、投機色の強い資産と、実際の企業需要に支えられるブロックチェーンインフラへと二極化しつつあるという。
長期的には、大企業が標準的に採用するブロックチェーンプラットフォームを見いだすことの方が、より大きな機会になるとした。物流、契約管理、在庫システムなど企業実務で使われる基盤が構築されれば、それ自体が強い参入障壁になり得ると指摘した。
同氏は「プラットフォーム上で採用が進んで初めて、競争優位が生まれる」と述べた。
さらに、ブロックチェーンや人工知能(AI)の将来は、資産そのものではなくインフラの観点から捉えるべきだと強調した。デジタル資産よりも、エネルギーやデータセンターの方が大きな価値を持つ可能性があるとみている。
オリアリー氏は「電力はビットコインより価値がある」とも述べ、今後の投資判断では、資産そのものより、それを支えるインフラの重要性が一段と高まる可能性があると指摘した。
今回の発言は、トークン化や機関投資家マネーの流入に対する市場の期待が高まる一方で、大規模な採用の可否は規制の明確化と企業向けインフラの整備に左右されることを改めて示した。米議会の法制化の進捗とウォール街の実証が重なる中、市場の重心は個別トークンへの投機から、制度資金が活用しやすいブロックチェーン基盤へと移る可能性がある。