イーサリアム共同創業者のビタリク・ブテリン氏は6日、分散型予測市場の最大のセキュリティリスクはオラクルにあるとの見方を示した。市場の取引自体が分散化されていても、最終的な結果を確定する仕組みが脆弱であれば、信頼性は維持できないと指摘している。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、ブテリン氏はX(旧Twitter)への投稿で、予測市場が適切に機能するうえで重要なのは取引構造そのものではなく、結果判定を担うオラクルの信頼性だと強調した。
予測市場は将来の出来事の結果を巡って売買する仕組みだが、実際に何が起きたかを最終的に判断するのはオラクルだ。取引がオンチェーンで分散的に行われていても、オラクルが停止したり、不正操作やハッキングの対象になったりすれば、市場全体の信頼性が損なわれかねない。
ブテリン氏は、予測市場は「オラクルと同程度にしか信頼できない」と述べた。
特に懸念を示したのが、中央集権型のオラクル構造だ。少数の企業や限られた検証者が結果判定を担う形では、利用者はその判断を事実上受け入れるしかなく、分散型システムの理念と相いれないとした。
判定者が経済的な利害関係を持つモデルについても問題視した。結果確認に関わる参加者が判定結果から直接的な利益を得る構造では、インセンティブ設計がゆがむ恐れがあるという。
数百万ドル規模の資金が動く市場では、私的利益のために投票プロセスへ働きかける誘因が強まると分析した。そのうえで、金銭的なステーキングに依存しない分散型オラクルへの移行を前向きに評価した。
今後の重要課題として挙げたのが非公開投票だ。検証プロセスが公開されたままだと、同調圧力や組織的な攻撃、買収工作にさらされやすくなるためだ。
判定が確定する前に各参加者の立場が明らかになれば、結果に影響を及ぼそうとする動きが生じやすい。事実確認に参加する人々による非公開投票が、次の主要な改善点になるべきだと述べた。
今回の問題提起は、ブテリン氏がこれまでもDeFiの安全性を巡って繰り返し警鐘を鳴らしてきたオラクルリスクと重なる。過去にもイーサリアムの優先課題に触れる中で、オラクルのセキュリティと分散化を中核分野に位置付け、「古くからの問題が数多く残っている」と指摘していた。
オラクルは、融資、ステーブルコイン、デリバティブ、清算といったさまざまな仕組みに外部情報をオンチェーンで取り込む役割を担う。ここに脆弱性があれば、影響は広範囲に及ぶ可能性がある。
最近の事例として、Truooの予測市場プラットフォームで発生した紛争にも触れた。争点は、PolymarketのpUSDのローンチが2026年のトークンローンチ日程に合致するかどうかだった。
この案件では陪審団が最終判断を下さず、結果をリセットする方向で採決した。ブテリン氏は、この事例が現在のオラクルの仕組みでは最終判断を安定して下す体制がなお不十分であることを示しているとみている。
こうした議論は、人間の判断を機械ベースの意思決定で補完・代替しようとする新たな動きとも重なる。予測市場プラットフォームのProfitは、1万ドル(約150万円)の初期資本で、AIベースの予測市場を立ち上げた。
これは、PolymarketやKalshiなどのプラットフォームに蓄積された政治・国際イベントのデータを土台に、AIの予測ツールを組み合わせる流れの一例とされる。
市場もこうした変化に注目している。「Market Snapshot Billions FDV After Launch」市場では、足元で「Yes」の価格が100%となっている。参加者の間では、Profitがローンチ直後に高い完全希薄化後評価額(FDV)へ到達するとの見方が強いことを示している。
今後は、提携の拡大や資金流入、規制対応が、こうしたAIベースの予測市場の価値と普及を左右する要因になりそうだ。
ブテリン氏の指摘は、予測市場の核心が単なる価格形成ではなく、最終結果を誰がどのように確定するかにあることを改めて浮き彫りにした。取引が分散型に設計されていても、判定の仕組みが脆弱であれば、市場の信頼は成り立たないというわけだ。