Morgan Stanleyは6日、オンライン証券プラットフォーム「E*TRADE」で暗号資産の現物取引を開始した。まずは一部顧客を対象に試験導入し、売買手数料は1取引あたり0.5%に設定した。対象はビットコイン、イーサリアム、ソラナの3銘柄で、2026年後半にはE*TRADEの約860万口座へ拡大する計画だ。
BeInCryptoによると、手数料は50ベーシスポイント(bp)。CoinbaseやRobinhood、Charles Schwabを下回る水準で、個人顧客の獲得をにらむ。
現時点では一部ユーザー向けのパイロット運用にとどまる。Bloombergが伝えたスケジュールでは、E*TRADEの全顧客への展開は2026年後半を見込む。
今回のパイロットで売買できるのは、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)の3銘柄だ。
手数料の競争力は今回のサービスの柱の1つとみられる。Charles Schwabは、最近始めたビットコインとイーサリアムの現物取引で75bpを課している。
Coinbaseの個人向け手数料は、利用者のランクや決済手段によっては0.5%を上回る場合がある。Robinhoodは手数料無料を掲げる一方、実際の取引では通常35〜95bpのスプレッドが発生する。Fidelityの別の暗号資産関連商品では、1取引あたり約1%を課しているという。
Morgan Stanleyは取引インフラで外部企業と連携する。カストディー、流動性供給、決済は、シカゴ拠点のインフラ企業Zerohashが担う。Morgan Stanleyは同社株式を保有している。
また、MastercardがZerohashの買収を検討しているとも伝えられており、取引規模は約20億ドルとされる。
今回の取り組みは、Morgan Stanleyの暗号資産事業拡大とも連動する。E*TRADEでの提供開始に先立ち、同社はビットコイン現物の上場投資信託(ETF)「MSBT」も投入した。
MSBTは4月に上場した。信託報酬(総経費率)は0.14%で、米市場でも最低水準の1つとされる。Morgan Stanleyはこのほか、イーサリアムとソラナの現物ETFも申請している。
今回のパイロットで扱う資産は、ビットコイン、イーサリアム、ソラナで、ETFの申請対象とも一致する。
販売チャネルの面でも強みがある。E*TRADEによって、Morgan Stanleyは暗号資産交換業者が取り込みにくい顧客接点を確保できる。
Morgan Stanleyの社内アドバイザーは約1万6000人で、管理する顧客資産は約9兆3000億ドルに上る。新たな取引サービスへの送客余地は大きく、市場ではE*TRADEの動きを単なる機能追加ではなく、販路拡大の一環とみる向きもある。
価格戦略でも攻勢を強めている。Morgan Stanleyは、競合銀行が本格参入する前に個人向け暗号資産市場でシェアを確保するため、収益性を一部抑えてでも低い手数料を打ち出したとみられる。こうした価格設定は、業界全体でマージン圧縮を容認するシグナルとして受け止められやすい。
今後は、CoinbaseやRobinhoodが実質的な手数料水準をどこまで見直すかによって、今回のパイロットが業界の価格体系に与える影響も変わりそうだ。
注目点は2つある。1つは、E*TRADEの試験導入が全顧客向け展開にどの程度のスピードでつながるか。もう1つは、既存の暗号資産取引プラットフォームが手数料やスプレッドの方針をどう見直すかだ。Morgan StanleyがETFとブローカレッジ取引を同じ資産群で広げている点を踏まえると、伝統的金融機関による個人向け暗号資産市場の開拓は一段と進む可能性がある。