BlackRockのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)の普及に伴い、コンピュート(計算資源)そのものが新たな資産クラスになり得るとの見方を示した。あわせて、コンピュートを対象とする先物市場が生まれる可能性にも言及した。
ブロックチェーン系メディアのBeInCryptoが6日(現地時間)に報じたところによると、フィンクCEOはミルケン・インスティテュートのイベントで、計算能力そのものを売買する先物契約市場が成立し得ると語った。
フィンクCEOは、コンピュートを単なるクラウドサービスとしてではなく、金融市場で価格付けされる希少資源として位置付けた。エネルギーや農産物といったコモディティになぞらえ、企業が燃料価格をヘッジするのと同様に、AIインフラのコストも構造化された先物契約で管理できるとの考えを示した。会場にはBrookfieldのブルース・フラットCEOも登壇していた。
フィンクCEOは「新しい資産クラスはコンピュート先物を買うことだ」と発言した。AI投資の拡大に伴い、データセンター、半導体、メモリ、電力といった物理インフラを金融商品の裏付け資産として捉える構想とみられる。機関投資家にとっては、AIモデルの運用に必要なチップや電力容量のコストを事前に固定する手段になり得るという。
同氏は、現在の供給体制がAI需要に追い付いていない点も強調した。米国は想定されるAIワークロードを賄うのに十分なチップ、メモリ、電力設備を確保できていないとして、「電力が足りない。コンピュートが足りない。チップが足りない」と述べた。
一方で、AI投資が過熱しているとの見方には与しなかった。市場の一部にあるバブル論を退け、需要は依然として供給を上回っていると説明した。クラウド企業や大手半導体メーカーによる大型資金調達が続いているものの、それだけで世界のデータセンター増設需要をすべて満たすのは難しい可能性があると指摘。この分野では、将来的に資本不足が表面化する局面もあり得ると警鐘を鳴らした。
こうした認識は、BlackRock自身の動きとも重なる。フィンクCEOは、BlackRockが今週中にも社名を明かしていない大手クラウド事業者とのパートナーシップを発表する予定だと明らかにした。この提携は、同社が運用する13兆9000億ドルの資産をAIインフラ分野へ一段と振り向ける契機になる見通しだ。単なる資金供給にとどまらず、物理インフラに直接投資する方向へ軸足を移しつつあるという。提携先の社名は正式発表まで公表しないとした。
もっとも、コンピュート先物市場の創設には標準化という大きな課題がある。取引所が関連商品を上場するには、世代ごとに異なるハードウェア性能や変動するAIワークロードを踏まえ、何を基準単位とするかを定めなければならない。計算性能をどう測定し、契約単位に落とし込むかについては、現時点で業界の共通認識は形成されていない。
それでも今回の発言は、AIインフラを巡る資金フローが、より具体的な実物資産市場へ向かう可能性を示している。電力、半導体、データセンター需要が同時に膨らむなか、BlackRockはコンピュートを長期資本の投資対象となり得る資産として見ている。今後の焦点は、業界がコンピュートの標準単位を定義できるか、そしてそれを基に実際のデリバティブ市場が立ち上がるかどうかにある。