電気自動車(EV)のバッテリーは、約15万km走行後も初期容量の90%台前半を維持する車種が多いことが分かった。EVバッテリーの寿命に対する消費者の不安とは対照的に、実際の劣化は比較的緩やかだとする分析結果だ。
9月3日付のCleanTechnicaによると、EV診断を手掛けるAvilooは、2022年から2026年にかけて北米、南米、欧州、アジア、豪州で収集した50万件超のバッテリー状態点検データを基に、主要EV20車種の性能維持率を比較した。
分析では、多くのEVが5万km走行後でも初期容量ベースで約95%の性能を維持した。さらに15万kmに達した時点でも、おおむね初期容量の90%台前半を保っていたという。
一部の車種では、15万kmを超えても低下幅は数ポイントにとどまった。長期使用でバッテリー性能が大きく落ちるという一般的な見方とは異なる結果といえる。
一方、車種ごとの差は小さくなかった。モデルによっては、約10万kmの走行でバッテリー容量が約20%低下した事例も確認された。すべてのEVが同水準の耐久性を備えているわけではないことを示している。
性能維持率の高さが目立ったモデルとしては、Hyundai MotorのIoniq 5とKona EVのほか、Mercedes-Benz EQA、BMW i4、Volvo XC40 Recharge、Polestar 2、Ford Mustang Mach-Eが挙げられた。
今回の調査で注目されるのは、EVバッテリー劣化を巡る市場の見方だ。CleanTechnicaは、EVの航続距離やバッテリー寿命への懸念が、実態以上に大きく受け止められている可能性があると指摘した。
その背景として、近年のEVは航続距離が大きく伸びている点を挙げた。現在のEVは約10年前と比べて航続距離が3〜4倍程度に伸びており、一定の劣化が生じても実用上の影響は限られる可能性があるという。
例えば、初期の航続距離に余裕があるEVであれば、容量が一部低下しても通勤や日常利用への支障は大きくない場合がある。CleanTechnicaは、実際の利用では「月あたりの充電回数が数回増える程度」にとどまるケースもあると説明した。
もっとも、今回の結果をすべてのEVに当てはめるのは難しい。Avilooの分析対象は世界中の全EVではなく、人気の20車種に限られるためだ。特定ブランドや特定モデルが長期的に最も優れた耐久性を持つと断定するのは困難だとしている。
それでも、50万件超のバッテリー状態データに基づく今回の分析は、EVバッテリーの実際の耐久性を見極める上で有力な材料になりそうだ。
EV市場の成熟に伴い、バッテリー評価の軸も変わる可能性がある。新車時の最大航続距離だけでなく、10万〜15万km以上走行した後もどの程度安定して性能を維持できるかが、中古EVや新車購入の重要な判断材料になりうる。
今回の調査は、少なくとも主要EVの相当数が、長距離走行後も想定以上に安定したバッテリー性能を保っていることを示した。今後は劣化の有無そのものよりも、劣化の進み方や劣化後の実用性が、EVバッテリー競争の新たな評価軸になる可能性がある。