中国の人工知能(AI)スタートアップMoonshotAIが、香港で新規株式公開(IPO)を非公開で申請した。事業拡大に向け、公開市場からの資金確保を急ぐ構えだ。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが4日付で報じた。関係者によると、MoonshotAIは早ければ2027年1~3月期の香港上場を目指している。上場時期は、規制当局の承認や市場環境によって前後する可能性がある。
同社はIPOに先立ち、最終ラウンドの資金調達も進めている。実現すれば、企業価値は約500億ドル(約75兆円)に達する可能性があるという。
一連の動きは、中国のAI企業が米大手AI開発企業との競争を強めるなか、MoonshotAIも成長資金の確保を急いでいることを映す。
MoonshotAIは7月、主力AIモデル「Kimi K3」を公開し、市場の注目を集めた。Kimi K3は2兆8000億以上のパラメータを持つ、世界最大級のオープンウェイトモデルとされる。
Kimi K3の投入は米AI業界にも波紋を広げた。中国のオープンモデルらしい価格競争力を維持しながら、シリコンバレーの主要なクローズドモデルに迫る性能を示したためだ。
同社は公開時、Kimi K3について「オープンモデルとして最先端水準にある」と説明した。独立系ベンチマークを根拠に、一部機能ではAnthropicやOpenAIの主要モデルを上回ったと主張する一方、総合性能では依然として最上位のクローズドモデルに届かないことも認めている。
AI評価企業Artificial Analysisの「Intelligence Index」では、Kimi K3はZ.aiの「GLM-5.3」と並び、中国勢の首位圏に位置する。両モデルのスコアは60点だ。
価格面でも競争力がある。Kimi K3の出力トークン100万個当たりの価格は15ドル(約2250円)で、OpenAIの「GPT-5.6 Sol」の30ドル(約4500円)の半額、Anthropicの「Claude Fable 5」の50ドル(約7500円)より7割安い水準とされる。
MoonshotAIのARR(年次経常収益)も年初から大きく伸びている。ARRは、足元のサブスクリプション売上を年換算して示す指標だ。
Nomuraは7月のリサーチノートで、MoonshotAIのARRが年末までに10億ドル(約1500億円)に達するとの見通しを示した。2026年半ば時点の推計値である4億~5億ドル(約600億~750億円)から、ほぼ倍増する計算になる。
Nomuraは、高成長の背景として開発者プラットフォームの採用拡大を挙げた。
またMoonshotAIは、Amazon、Microsoft、Googleといった海外クラウド事業者と、Kimi K3のホスティングを巡るレベニューシェア契約について協議している。実現すれば、各プラットフォームがホスティングで得たサービス売上の最大30%をMoonshotAIと分け合う案が検討されているという。
ロイターによると、協議はなお続いており、分配率のほか、データアクセスやトークン使用量の監査などが論点になっている。
中国AI企業の上場準備はMoonshotAIにとどまらない。杭州拠点のDeepSeekと上海拠点のStepFunも、上場に向けた準備を進めているとされる。
サウスチャイナ・モーニング・ポストは先月、DeepSeekが上海の新興企業向け市場「STAR Market」への上場を進める一方、プレIPO投資の調達も計画していると報じた。