AIデータセンターの拡大でメモリ需給が逼迫するなか、Googleが廃棄予定のサーバーから回収した旧世代のDDR4メモリを、最新のAIシステム向けに再利用していることが明らかになった。新規増産だけでは急増するAIインフラ需要を賄い切れず、既存資産の再活用に踏み切る動きが広がっている。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanは3日(現地時間)、GoogleがAIインフラ向けメモリの確保を目的に、既存サーバーからDDR4メモリを回収して再投入していると報じた。
Googleでサプライチェーンとインフラを担当するシニアディレクター、ニキル・チェリオン氏は、DDR4の再利用で対応しているものの、AIシステムに必要なメモリチップを十分に確保できていないと明らかにした。そのうえで、極めて逼迫した供給環境では、メモリメーカーが生産能力をより速いペースで増強することが最も持続的な解決策になると強調した。
旧世代メモリの延命はGoogleに限った話ではない。ハイパースケーラー各社では、巨額投資を伴うAIアクセラレーターの稼働が、メモリ不足や価格上昇で制約を受ける事態を避けるため、既存メモリ資産の活用を進めている。
Metaは年初に公表した文書で、Compute Express Link(CXL)を活用し、旧世代のDDR4と最新のDDR5を同一システム内で併用する案を示した。Marvellの製品マーケティング担当バイスプレジデント、クラム・マリク氏も、ハイパースケーラーがサーバーをDDR5中心へ切り替えた後も、CXLコントローラーを通じて既存のDDR4モジュールを延命していると説明した。
Metaによると、この方式を一部の推論処理に適用した結果、数百万台規模のサーバー環境でサーバー利用効率が最大25%改善した。分散キャッシュシステムでは平均レイテンシが約29%低下したという。
もっとも、旧世代メモリの再利用には性能面の制約もある。Metaは、市販されている一部のCXL製品について、コントローラーとDRAMを一体型で提供するため、企業が保有するDDR4在庫をそのまま活用しにくいと指摘した。
帯域幅とレイテンシも課題だ。Metaは、CXL経由で拡張したメモリの帯域幅が直結DRAMの約10分の1にとどまり、レイテンシは約60%高いと分析した。
このためMetaは、自社設計のVistara ASICを開発した。再利用を前提に設計したチップで、電力効率と低レイテンシを確保しつつ、ソフトウェアがワークロードをリアルタイムで監視し、遅延が許容範囲を超えた場合には該当機能を自動停止する仕組みだという。
メモリ価格の上昇も各社の負担を重くしている。Counterpoint Researchによると、2026年1〜3月期の汎用DRAM価格は前期比80〜90%上昇した。Marvellも、汎用DRAMの価格上昇率を四半期ベースで90〜95%と見積もっている。
AIデータセンターの増加に伴い、ハイパースケーラーのメモリ支出比率も大きく高まる見通しだ。Marvellは、この比率が2023〜2024年の約8%から、2026年には約30%まで上昇すると予想した。TrendForceも、2026年7〜9月期の汎用DRAM契約価格が再び13〜18%上昇すると見込む。
一方、供給能力の拡大はすぐには進まない。Changxin Memory Technologiesは、米国の輸出規制の影響で月24万枚前後のウエハー生産能力に制約を受けており、歩留まりもSamsung ElectronicsとSK hynixを42%下回ると推定されている。
SK hynixは新規ファブ2カ所に約380億ドルを投じる方針だが、供給拡大の効果が本格化するには時間がかかる見通しだ。Y2 DRAM工場がクリーンルーム段階に到達する時期も2029年半ばとされる。
さらに、台湾のMicron工場の生産に支障が出る可能性もある。台湾で約1万人を代表する2つの労働組合が、ボーナス算定方式を巡り、9月にストライキ実施の是非を問う投票を検討しているためだ。MicronはSamsung Electronics、SK hynixと並ぶDRAM大手3社の一角を占める。
供給不足の長期化を見込む声も出ている。SK hynixのクァク・ノジョン代表取締役は、DRAMの供給不足が2030年末まで続く可能性に言及した。
こうした状況を受け、GoogleやMetaによる旧世代メモリの再利用は、単なるコスト抑制策ではなく、AIインフラを維持するための現実的な選択肢として定着する可能性が高まっている。AI競争はGPUの確保だけでなく、それを支えるメモリの確保へと広がっており、退役前提だったDDR4に再び注目が集まっている。