Goldman SachsとMUFG銀行が主導する21行のドル建てステーブルコイン構想を巡り、元Ripple幹部のエミ・ヨシカワ氏が「銀行業界では見慣れた動きだ」との見方を示した。大手銀行は外部のブロックチェーンを活用するよりも、流動性や規制対応、手数料管理を自前で担える管理型の基盤を選ぶ傾向があるという。
ブロックチェーンメディアのU.Todayが3日付で報じたところによると、ヨシカワ氏は公式発表直後、自身のX(旧Twitter)で「デジャブのような感覚がある」「そうなるべき流れだった」と投稿した。
今回の構想では、主要銀行が外部チェーンではなく、自ら統制できる仕組みを志向している点が注目されている。ヨシカワ氏は2016年から2024年までRippleで戦略イニシアティブ担当副社長を務め、アジアでXRPの機関投資家向けネットワーク拡大に関わった。
こうした発言は、伝統的な大手金融機関が長年にわたり外部のブロックチェーンソリューションを検討しながらも、最終的には流動性、規制対応、取引コストを自ら管理できる閉鎖型インフラを選ぶ流れを示しているとの受け止めにつながっている。
MUFG銀行の動きは、日本国内で進む取り組みとも重なる。同行は今回のドル建てプロジェクトに参加する唯一のアジア系銀行である一方、国内ではSMBC、みずほとともに、2027年3月までに円建てステーブルコインを基盤とする決済の導入を進めている。
この事業は、MUFG内部で構築されたプラットフォーム「Progmat」を基盤とする。計画通りに進めば、MUFG銀行は銀行主導のブロックチェーン基盤上で、円とドルをまたぐ決済スキームを構築する可能性がある。
一方で、銀行コンソーシアムが狙う領域は、すでに規制対応済みのステーブルコインが手掛ける市場と一部で重なる。RippleのRLUSDは2026年9月までに時価総額が20億ドル(約3000億円)を超え、このうち10億ドル(約1500億円)超がXRPレジャー上で発行された。
RLUSDは6月に日本の金融庁の承認を受け、SBI VC Tradeで取り扱いが始まった。
もっとも、両者が狙う市場は完全に同じではない。銀行系トークンは、コンソーシアム内の決済や大企業間取引など、銀行間で厳格な管理や監査が求められる領域を主な対象としている。
これに対し、RLUSDやUSDCのようなトークンは、オープンなフィンテックサービス、小売決済、DeFiエコシステムで引き続き存在感を保つ可能性がある。導入の速さや調整コストの低さが重視される分野では、独立系の規制対応型ステーブルコインになお優位性があるという見方だ。
ヨシカワ氏の見立ては、ブロックチェーンベースの決済そのものの有効性は認めつつも、大手銀行連合の実行速度には慎重な立場を示すものでもある。銀行の選択自体は目新しいものではなく、21行が関わる枠組みでは、内部ルールの整備やガバナンス調整が複雑になりやすいことも示唆した。
そのため、2027年の導入を目指す銀行コンソーシアムが合意形成を進める間に、RLUSDやUSDCといった独立系ステーブルコインが市場を先行して広げる可能性もある。今後の焦点は、ステーブルコイン市場が単一の標準に収れんするのか、それとも銀行中心の閉鎖型決済ネットワークと、オープンな暗号資産決済ネットワークに分かれていくのかにありそうだ。