米下院が9月後半の審議日程を大幅に削減し、暗号資産の市場構造を定める「クラリティ法」の選挙前成立が遠のいている。上院は9月15日に初の手続き採決を予定しているが、修正案の調整や下院での再可決が必要となる可能性があり、日程面の余裕は乏しい。
ブロックチェーンメディアのU.Todayなどが3日付で報じたところによると、下院共和党は9月会期の最後の2週間分の日程を削除した。下院は14日にワシントンに戻る予定だが、復帰後の審議期間は約1週間にとどまる見通しだ。
この日程変更は、クラリティ法の審議に直接的な制約となる。上院は14日に夏季休会を終えて再開し、15日に同法案を巡る最初の手続き採決を実施する予定とされる。
もっとも、上院で可決されても立法手続きが直ちに完了するわけではない。上院が法案に修正を加えた場合、下院は修正後の法案を改めて可決する必要があり、その後に大統領の署名を経て成立する。
Punchbowl Newsのシニア記者、ブレンダン・ペダーセン氏はX(旧Twitter)で、今回の動きについて暗号資産業界にとって「極めて悪いニュースになり得る」との見方を示した。短縮された下院日程により、クラリティ法の採決が選挙後のいわゆるレームダック会期に持ち越される可能性があると指摘した。
選挙後に審議がずれ込めば、議会勢力の変化が重なる可能性もあり、法案の先行きは一段と不透明になる。
Galaxy Digitalでリサーチ部門を統括するアレックス・ソーン氏も、同様の見方を示した。9月の下院日程が縮小されたことで、クラリティ法が中間選挙前に可決される可能性は「極めて低い」と述べた。
日程面でも余裕は乏しい。上院は9月15日から10月第1週まで約3週間の立法日程を確保している一方、下院は会期が大幅に圧縮され、両院で順次審議を進める時間がほとんどなくなった。
下院共和党指導部や議員は、中間選挙を前に地元での選挙戦に軸足を移す必要もある。こうした事情を踏まえ、マイク・ジョンソン下院議長と共和党議員は9月最後の2週間を取り下げ、下院は選挙前まで長期休会に入る見通しとなった。
審議が選挙後に先送りされれば、法案の不確実性はさらに高まる。中間選挙の結果次第で議会の勢力図が変わる可能性があるためだ。暗号資産業界は、日程の遅れだけでなく、選挙後の議会勢力の変化も織り込む必要に迫られている。
クラリティ法はすでに下院を通過している。下院は2025年7月17日、同法案を294対134で可決した。共和党議員は全員が賛成し、民主党議員も78人が賛成票を投じるなど、超党派の支持を得ていた。
一方で、上院は下院通過案をそのまま採決するのではなく、独自の修正案を準備しており、立法プロセスは複雑さを増している。
現在、上院の銀行委員会と農業委員会は、それぞれ異なる修正案や審議の枠組みを検討してきた。上院で本格審議に進むには、60票が必要となる手続き上のハードルを越える必要がある。
仮に上院を通過しても、下院案と上院案の文言の差を埋める作業が残る。こうした構図の中で、今回の下院日程の短縮は単なるスケジュール調整にとどまらず、クラリティ法全体の成立時期を左右する新たな不確定要因として浮上している。
市場の焦点は2点に絞られる。第1に、上院が15日に予定する最初の手続き採決を実際に行えるかどうか。第2に、上院で法案処理が進んだ後、下院が選挙前の限られた会期内に上院案へ対応できるかどうかだ。
両院が法案文言の差異を速やかに解消できなければ、クラリティ法は選挙後の新たな議会構成の下で、再び不透明感にさらされる可能性が高い。