中国のヒューマノイドロボット企業Unitreeが、大型の新規株式公開(IPO)を決めた。もっとも、市場の関心は派手な実演や上場時の熱狂そのものではなく、実際の産業現場でどこまで使われ、収益を生み出せるかに移りつつある。
米CNBCが14日付で報じたところによると、Unitreeは公募価格を1株150.8元に決定し、約9億ドル(約1350億円)を調達した。企業価値は約610億元と評価された。
同社は月内に上海証券取引所の新興ハイテク市場「科創板」へ上場する予定で、中国本土市場では初のヒューマノイドロボット企業の上場案件となる。
公募需要は強かった。オンライン申込では公募株数の5000倍超の需要が集まり、個人投資家への配分確率は0.018%まで低下した。AIスタートアップのDeepSeekも戦略投資家として参加した。
一方、上場後の事業の持続性には慎重な見方もある。Unitreeのロボットは、カンフーの動作や転倒後に自力で起き上がるデモで注目を集めてきたが、産業用途や家庭用途で繰り返し運用できる段階にはなお距離があるとの指摘が出ている。
Lotus Asset Managementの共同代表ハオ・ホン氏は「興味深い技術だ」と評価しつつ、「実際に家事をこなす場面は見たことがない」と述べた。
Unitreeも目論見書で、大規模な商用化が想定より遅れる可能性を認めた。とりわけロボットハンドの精度や耐久性については、継続的な商用利用に必要な水準に達していないと説明している。
VP Bankのドミニク・プロス氏も、高性能ヒューマノイドがこなせる作業はまだ限られており、1回の充電で確保できる稼働時間も長くないと分析した。
それでも、中国のロボット市場には資金が急速に流入している。Unitreeに連動した上場前の無期限先物は14日、Hyperliquidで公募価格の約4倍の水準で取引される場面があった。
中国のヒューマノイド産業の成長を支える要因としては、価格競争力も大きい。Wood Mackenzieは、2020〜2025年にヒューマノイドの平均価格が93%下落し、約5万8000ドル(約870万円)まで下がったと推計している。
Unitreeの主力モデル「G1」は約1万6000ドル(約240万円)で販売されている。
市場見通しも強気だ。Wood Mackenzieは、2035年までに世界のヒューマノイドロボットの普及台数が年平均90%超で増え、1000万台を超えると予測した。中国は前年、世界のヒューマノイド導入の約90%を占めたという。
ただ、Unitreeの業績は期待先行の側面も映し出す。前年の売上高は4倍超に拡大した一方、今年1〜3月期の調整後利益は、研究開発費とマーケティング費用の増加により52%超減少した。
また、2025年1〜9月のヒューマノイド売上の約4分の3は、研究・教育分野向けが占めた。
高い企業価値も今後の重荷になりかねない。CoinExの主任アナリスト、ジェフ・コー氏は、Unitreeが実際に売上成長を示している点は評価しつつも、前年利益ベースで200倍超に達する企業価値には投機的な期待が色濃く織り込まれていると指摘した。
米国との技術摩擦も変動要因だ。米国は海外製のヒューマノイドや四足歩行ロボットに対する規制を強化しており、Unitreeの海外事業にも負担となる可能性がある。
同社の前年売上の約13%は米国市場によるもので、輸出規制の影響は無視しにくい。
結局のところ、Unitreeの真価を測るのは宙返りのようなデモではない。工場や物流の現場で人手をどこまで代替し、企業にどれだけの経済的価値をもたらせるかが核心となる。
技術デモとIPOの熱狂を経て、焦点は「ロボットは本当に稼げるのか」という一点に絞られつつある。