イングランド銀行は、国境をまたぐ貿易金融で、ステーブルコイン決済とデジタル・ポンドを組み合わせた決済モデルの実証に乗り出した。輸出企業への前払いを迅速化し、中小企業の資金繰り改善につなげられるかを検証する。
Cointelegraphが8月12日(現地時間)に報じたところによると、この実証はイングランド銀行の「デジタル・ポンド・ラボ」で実施する。ステーブルコインによる支払いと、模擬デジタル・ポンドによる最終決済が、一連のフローとして機能するかを確かめる。
プロジェクトにはNOBO Finance、Dun & Bradstreet、Polygon Labsが参加する。輸出企業がステーブルコインの決済ネットワークで前払いを受け取り、その後、英国の輸入企業が模擬デジタル・ポンドで最終決済する仕組みだ。実際の顧客資金は用いず、デジタル・ポンドもシミュレーション環境で扱う。
イングランド銀行は今回の実証について、今後の政策方針や特定の企業・製品への支持を意味するものではないと強調した。参加企業が設計した実験であり、関連サービスの承認や将来の政策シグナルとして受け取るべきではないとしている。デジタル・ポンドの発行についても、現時点では決定していない。
実証の焦点は、国際取引で中小企業が直面しやすい決済の遅れや資金調達の制約を和らげられるかどうかにある。輸出企業は出荷後、代金を受け取るまで数日を要することがあり、その間は運転資金が拘束される。企業規模が小さいほど、貿易金融へのアクセス確保が重要になる。
これと並行して、参加企業は別の実証も進める。取引データやオープンファイナンス情報、Dun & Bradstreetの商取引リスクデータを組み合わせ、中小企業が複数の金融サービスで活用できる信用プロファイルの構築を検証する。Polygon Labsは必要となるスマートコントラクト基盤を提供する。
今回の取り組みは、英国で進むステーブルコイン規制の整備とも歩調を合わせる。イングランド銀行は6月、ポンド建てステーブルコインに関する規制案を公表した。発行体が準備資産の最大70%を利付国債で保有できるようにする一方、ステーブルコインごとに最大400億ポンドの期限付き発行上限を設ける内容だ。個人や企業の保有上限を設ける従来案から、発行量を直接管理する方式へと改めた。
イングランド銀行は2026年末までに関連ルールを確定し、2027年の施行を目指す。金融安定に影響を及ぼし得る規模のステーブルコインはイングランド銀行が規制し、それ以外の非重要ステーブルコインは金融行為規制機構(FCA)の所管とする方針だ。
既存の決済インフラ改革も同時に進めている。イングランド銀行は5月、リアルタイムグロス決済(RTGS)システムと清算自動振替システム(CHAPS)について、週末運用の導入と日中の稼働時間拡大を提案した。実質的に年中無休に近い体制へ移行し、国境間決済やトークン化を前提とした新たな決済モデルを支える狙いがある。
こうした動きの中で、イングランド銀行は7月、HSBCのオリオン・プラットフォームが英国デジタル証券サンドボックスで運用できるよう承認した。同プラットフォームは、英国が推進するデジタル国債を含むデジタル債券の発行を支援する見通しだ。ステーブルコイン規制の整備、デジタル・ポンドの実証、既存決済網の見直しを並行して進めることで、英国はトークン化資産時代を見据えた金融インフラの再編を段階的に進めている。