米証券取引委員会(SEC) 写真=Shutterstock

米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産プロジェクトの初期資金調達について、証券登録を免除する新たなルールの検討に入る。議会でデジタル資産関連法案の審議が停滞する中、SECが独自の規則整備によって規制の空白を埋める動きとして注目されている。

ブロックチェーンメディアのDecryptが8月11日付で報じたところによると、SECは14日に公開会合を開催し、いわゆる「Regulation Crypto」案を協議する予定だ。

焦点となるのは、暗号資産プロジェクトが立ち上げ段階で資金を調達する際、既存の証券登録手続きを全面的に求めない専用の規制枠組みを設ける点だ。あわせて、一定の条件を満たしたプロジェクトについては、成長後にSECの規制対象から外す仕組みも検討する。

具体的には、プロジェクトが十分に脱中央集権化し、創業者や開発チームがネットワークの運営を積極的に管理しない段階に達した場合、規制対象から除外することを想定している。

SECが8月10日に公表した告知には、一部のデジタル資産の発行形態に対応した制度枠組みを整備する案が盛り込まれた。案件が意見募集の手続きに進めば、個別職員の声明や解釈にとどまらない、業界全体に適用し得る正式なルール策定プロセスが年内にも動き出す可能性がある。

今回の動きは、ポール・アトキンスSEC委員長の政策方針を反映したものとの見方もある。アトキンス委員長は、従来の執行中心のアプローチに代わり、一定条件の下で暗号資産プロジェクトに規制上の例外を認める「Regulation Crypto」手法を打ち出してきた。

アトキンス氏は3月、スタートアップ向けの免除制度について、最長4年間継続し得るほか、その間に開発者がプロジェクトを脱中央集権化へ移行させるための猶予期間を確保できるとの考えを示していた。

もっとも、今回の告知では、資金調達額の上限や対象範囲などの詳細な基準は示されていない。実際に制度設計が進めば、意見募集の過程で、調達規模、投資家保護の措置、脱中央集権化の判断基準などが主な論点になる見通しだ。

新ルールは、資金調達や監督の緩和を無条件で認めるものではない。プロジェクト開発者がネットワーク構築後に経営から手を引き、積極的な支配権を行使しないことが前提となる。

制度の方向性としては、初期段階では限定的な規制上の例外を認め、その後、創業者主導の事業から独立した脱中央集権型ネットワークへ移行した段階で、規制負担を一段と軽減する設計が想定されている。

こうしたSECの動きは、議会での立法の遅れとも連動している。米上院は8月の休会入りに伴い、デジタル資産市場の法的基盤整備を目的とするClarity法案を前進させることができなかった。

市場構造やデジタル資産の規制管轄を明確にする法案審議が遅れる中、SECが独自の規則制定を通じて規制の不確実性の一部解消を図るとの見方が広がっている。

TD Cowenのジャレット・セイバーグ氏は顧客向けメモで、今回の措置について、上院が8月休会前にClarity法案を進められなかった後、SECが暗号資産市場に規制の予見可能性を与えるために進める複数のルール整備の「第一段階」と位置付けた。

業界が注目するのは、こうしたルールの持続性だ。SECは今年、ステーキングやエアドロップ、マイニングを巡って相次いで見解を示してきたが、個別職員による声明や解釈は、今後の政策方針次第で変更される可能性がある。

これに対し、正式な規則として確定すれば、特定の委員長や政権の任期を超えて、より安定した規制基準として機能する可能性がある。

ただし、議会が法律を制定すれば情勢は変わる。法律はSECの独自ルールに優先する法的基盤となるためだ。このため市場では、9月以降にClarity法案の審議が再び本格化する可能性にも関心が集まっている。

SECは並行して、暗号資産の規制境界の明確化も進める。商品先物取引委員会(CFTC)と連携し、デジタル資産を分類したうえで、どの機関が管轄するかを整理する案も進められている。

Clarity法案は来月に再協議される可能性を残す一方、予測市場では年内成立の確率は約22%とみられている。

14日のSEC公開会合は、米国の暗号資産規制が執行中心から正式なルール制定へ軸足を移すかどうかを占う試金石となりそうだ。ただ、当日の協議が直ちに新ルールの施行につながるわけではない。

仮に提案が採択されても、意見募集や修正、最終決定などの手続きを経る必要があり、ルール整備には数カ月を要する可能性がある。

今後の焦点は、SECがどのようなプロジェクトを免除対象として認めるのか、資金調達規模にどの程度の制限を設けるのか、そして「脱中央集権化」をどの基準で判断するのかに移る。

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