企業ブランドだけで「良い職場」を見極めるのは難しい――。米非営利団体のBurning Glass InstituteとSchultz Family Foundationが、2019~2024年に米大手雇用主1750社で働いた1200万人の職歴を分析したところ、昇進機会や定着率、給与水準は企業単位ではなく職種ごとに大きな差があることが分かった。米Business Insiderが10日(米国時間)、この分析結果を報じた。
両団体はLinkedInやGlassdoorなどで得た職歴データを基に、企業別・職種別のスコアを算出した。評価指標は、入社後5年以内の社内昇進の可能性、3年以上在籍する比率、給与水準の3項目だ。
分析によると、同じ企業でも職種によって評価は大きく分かれる。平均的な企業では、昇進機会と在籍率について、最も高い職種と最も低い職種の差が81パーセンタイルに達した。
例えばChanelでは、ファッションデザイナーの在籍率が全米の同職種比較で97パーセンタイルだった一方、プロジェクト管理職は16パーセンタイルにとどまった。
テック職ではAmazonとSalesforceが目立った。両社は、高い給与水準に加え、昇進の速さと高い定着率を兼ね備える企業として評価された。
Salesforceのソフトウェアエンジニアは、昇進が97パーセンタイル、在籍率が98パーセンタイル、給与が96パーセンタイルとなり、米国内でも特に好条件の職種の一つと位置付けられた。Adobe、Google、Microsoftもこれに近い水準だった。
もっとも、ビッグテックが一律に高評価だったわけではない。Appleは給与と在籍率では強みがある一方、昇進機会は相対的に限られていた。Uberは昇進面では比較的高い評価を得たが、人材定着に課題があるとされた。
Metaは昇進面では平均的で、在籍率は職種によるばらつきが大きかった。
シリコンバレー以外にも評価の高い企業はあった。Liberty Mutualは給与水準こそビッグテックに及ばないものの、キャリア形成と長期勤続の面では多くの大手テック企業を上回った。ソフトウェアエンジニアでは、Metaに比べて昇進可能性が3.7倍高いとされた。
USAA、John Deere、Northwestern Mutualも、テック人材に安定した成長機会を提供する企業として挙がった。Mayo Clinicは給与水準が低めだったが、ITプロジェクトマネジャー職とシステムアナリストの在籍率は99パーセンタイルに達した。
一方で、知名度の割に評価が伸びない例もあった。Goldman Sachsのソフトウェアエンジニアは給与こそ高いが、昇進機会は少なく、離職率も高かった。データサイエンティストも昇進と在籍率の両面で低水準だった。
Deloitteでも、複数のテック職で社内成長や長期勤続の面に弱さが見られた。
こうした差は、テック人材にとって以前にも増して重要になっている。数年前までは、開発者やデータサイエンティストはキャリアが頭打ちになっても、転職によってより高い職位や年収を得やすかった。だが足元では、採用減速やレイオフが続いている。
テック人材が求める条件は、華やかなブランドや高年収だけではない。長く働きながら成長できる環境があるかどうかが、就業先選びの重要な判断材料になっている。今回の分析は、「良い職場」は企業名だけでは測れず、職種単位で見極める必要があることを示している。